第57章 追憶
根幹とは…個だ。
された時に何を感じるのか
目の前の現実…
それの何に期待し、何を思い、言動に移すのか…
その上で、誰に対してでも傷付けまいとしたのは…
殺すまいとすることを選んだのは、ケイトという根幹だ。
どれほど腐った人間に恵まれようとも、どれほどの苦痛に塗れようとも
ただの一度も助けられず聞く耳も持たれず、味方も理解者も友も寄り添ってくれる者も聞く者も一人も何もおらず、拒絶され孤立させられ続けようとも
彼女は――人へ同じことをするまいとすることを選んだ。
その辛苦がわかるから、幸せを味わえていたかもしれない未来を足蹴に踏み潰し無下に冷たい刃を一方的に刺され続けられた側の気持ちがわかるから――と
神の力を手に入れてもなお、常に人を想い、謙虚に振る舞い、決して驕ることなく…力になろうと優しく寄り添ってまでくれた。
純真な善意で、見返りも求めず、様々な苦境から救うばかりか…恩を返すよりも「幸せになれ」と豪語するほどに←2013ページ参照
傷付けまいとする献身――
何をされようとも、してきた相手にでさえも決して揺るがない根幹。
ケイトのそれこそが、人を突き動かしたのだろうと考えた。
それは魅力でもあり、今まで犯したことのない経歴によって重みは増す。
それまで人からされてきた数々の残虐な行為、凄惨さも相まって…
誰もいなくとも、現れなくとも人には決してしないそれが…とても気高く、美しく、高潔なものだと思う。
言動も込みで、彼女は高貴だと実しやかに囁かれた。
だがしかし…
ケイト「お願いだからやめて!!!//;」
本人は褒められ慣れていないようで、僕の後ろへ隠れるばかりだった。
人見知りというか…謙虚というか…;
まあ、調子に乗って人に迷惑をかけるよりはマシだと思う他なかった;
ケイト「ディオニュソスは、デメテルが葡萄酒の神酒で酔わせていいように行動させられてたんだって。
それも本人に気付かせることも無いまま…
それほどにソーマの以上に極まっていた神酒なんだって」
フィン「…そうか…
フィルヴィスからの感謝の理由はそれか」←2136ページ参照
分身が見ていた光景を思い浮かべながら、僕は一人納得した。
そうして…話が一段落した所で連絡が来て、アルとディ達と服屋の中で合流した。