第57章 追憶
ケイト「持つ力に、差が生まれるのは何故だ――?
迷宮があるからだ、オラリオがあるからだ、
潜って生還する者達が揃って皆、急激に力をつけるからだ、
ランクアップする要因があまりに多く、人も集まるが故に力に溺れる奴等もまた増える。
役割の違いなど気にも留めず、客は神だとこの力が見えないかと振りかざす奴等は決してなくならない、いなくなったりもしない。
なら…その場を、オラリオを壊すしかないだろ。
いつでも安心して潜れるそれも、力を身に付ける為に頑張った後で休める寝床も
それらの強くなる為の最適な環境がなくならない限り…その差はなくならない。
集まるなと言った所で…集まらなくなるわけではない。
だからこそ…ああしたんだろ。
ここの外では力にさほど差異はないからな。
一度…それに戻す為に必要なことなんだろうと、私は思うよ。
迷宮に潜りさえしなければ、レベル差も力の差も、あれほど顕著にはならないし。
でも…始祖神の記憶が蘇りつつあったあの時…
神を食ったブランシェごと食べれて、本当によかったよ。
デメテルがいなければ…自我はもたずに、崩壊していた。
始祖神の時の神の力の使い方も思い出したお陰で…私は、色んな逆境を越えることができた。
見えるものが拡がった――
その闇は…いくらぶつけたとしてもなくなるわけじゃない。
傷も、痛みも、決して消えるわけじゃない。
戦いなんだ―
生きる為の――自分が、自分である為の
要は…それに人を、周囲を、巻き込むか、巻き込まないようにするか…それだけだ。
自らが抱いた、周りの言動によって抱いた傷…怒り…憎しみ…怨恨…負の感情の端々によって産み出される闇……
その為に、せめてこれだけは思い通りに動いて欲しいという欲望のままに、期待のままに突き進む。
その結果なんだと思う」
フィン「…そうだね」
デメテルと一体になっていたからか、彼女のそれをより深く理解しているようだ。
顎に手を当てたまま、まるで自分のことであるかのように語るケイトを前に…僕は頷いた。
やっとわかったと――