第56章 プール大会
ケイト「それでも…殺したいって思わないのは、悪なのかなあ?」ずびっ
フィン「!」
ケイト「殺したら…復讐してしまったら、同じ奴になってしまう。
殺したいよ…本当は……
それでもさ…どうしても、殺せないんだっ;
喪う時の痛みが、奪われた時の痛みが、させてくれないんだっ!;
父上は殺されて、母上は流行り病に殺されて…
従者以外では…一人になって……
戦で、誰かが同じ思いをするのは嫌で…(ぐすっ)
だから、必死に駆け回った。
殺されそうになったら乱入して、どっちも逃がしてっ…!!
あんな思い、誰にもさせたくないってっ!」
ああ、知っている。
前世のことだ。
そして…前世の君は……
ケイト「それでも…相手は違う!
現に、前世の私は殺されたっ;
こんな思いを抱いてしまうのは、間違いなのかな?
諦めて、同じになればよかったのかな?
それでも、なりたくないって…そこにいったら…終わりだって…」
フィン「ああ…」
ケイト「だからさっ…;」ひっく
フィン「大丈夫だ(なで)
奪わせない。
僕が――喪わせたりなんかはしない」真剣
ケイト「ひっく……
それでも…
私は…死にたいって思うんだ。
何度でも思うんだ…
あんな苦しみを味わう前に死んでしまいたいって、耐えられないって…
ねえ…フィン……
私は…
ひっくしょん!
ぐすっ…ずびっ……
生きてても…いいのかな…?」
フィン「!!」瞠目
ケイト「強大過ぎる力は…争いの火種になる。
不幸を呼び寄せる。巻き込むことになっちゃう。
それが…私は嫌なんだ。何よりも嫌で仕方ないんだ…
皆、優しいから…
ここにいる人達は違うから、助けようとしてくれるから…
余計に――そう、思うんだ。
だから……
だから――その前に、自分を殺した方がいいんじゃないのかな?」
涙を浮かべながら…震えた声で、想いをきちんと伝えてくれた。
心の奥底でわだかまっているだろう想いを、ちゃんと口に出して…
それに対して僕は、いつものように腹を割って意見をそのまま伝えた。