第56章 プール大会
彼女から僕は見返りの無い優しさというものを、親以外から初めて貰った。
それが、人として生きていく上では…本当に大事なことなのだと知った。
一人では生きていけない…必ず優しさをもらってる…
当たり前のことだが、本当はとても特別で凄いことだと…43年間生きてきた経験の上で言い切れる。
実行に移せる人など…非常に限られていることを身をもって知っているからこそ、余計に。
それを実行できている人間など…ケイト以外で見たことなど、一度としてなかった。
自分が体験したことを相手に繋げるとしても…
この世ではされた嫌なことに対してやり返す者の方が、普通として存在している。
だが、それを通り越して、人にされて嬉しい事を人にする……
それだけでも十分凄いと言える。
その言動の『重み』が、ただ優しいだけの人間とは…全くもって違う。
だからこそ、もっと明るく、過去のしがらみや固定観念に縛られるでもなく…
これからを…前を見て、自信をもって生きていって欲しい……
彼女にはもっと…自らの幸せを求めて欲しい……
彼女から教わった…
人は外面を見るのではなくて、ちゃんと見ること…
見えない所で頑張ってる人をしっかりと見ようとすること。
そんな人がいないと報われ無い。
どれほどの苦痛を抱えようとも、どれほどの闇に蝕まれようとも…
八つ当たりせず、仕返しもせず、される側の人の気持ちを慮れる。
人の心に、苦痛に寄り添い、自らのことのように哀しむことが出来る。
それが…生きていく上で、人として最も大事なことだと教えられた。
アルテミス「だが…私の気が済まない!」
ケイト「じゃあアルテミス!お前幸せになれ!!
以上!」きっぱり&真剣
テロップ『異常!の間違いだ!』
アルテミス「・・」ぱくぱく←開いた口が塞がらない
フィン「…知っているとは思うが、あれが彼女の本音だ^^;」苦笑
忍耐力が…異常にあるのかと思っていた。
だが…違った。
それ以上に……自分と同じ人を出したくない。
果てしない苦痛を味わい、助けられず、求められず、悲鳴を上げ続ける姿に、過去の自分をどうしても重ねてしまう。
だから放っておけない。だから是が非でも助けたいと直向きに動く、足掻く。
そんな性格なのだろう。
だからこそ――僕は、心動かされた。