第56章 プール大会
時は遡り、数十分前――
オラリオから遥か離れた大陸の果て、エルソスの遺跡…
冒険者で組んだとしても10日はかかるだろう距離を、一瞬で飛び越えていった。
その遺跡に古代大精霊達によって施された古の封印。
そこへ封印されていたモンスター、アンタレスが自らに掛けられた封印を破り復活してしまったとのことだ。
アンタレスによって、見知らぬモンスターが繁殖し続けており
それに伴い遺跡の近くにあった村や森がボロボロになり、モンスター達は今もなお暴れ続けている。
この村は終わりだと誰もが絶望する中…一つの違和感が僕達へ訪れていた。
アルテミス「…何故……何故、夜なんだ?」
時刻にすれば朝の10時過ぎ。
だというのに周囲は暗く、星々は輝き――時の流れの違いを告げていた。
優に全長8mは超えるだろう大きなサソリに蹂躙されようとしている光景を前に、ケイトは笑った。
ケイト「お前に渡したお守りの効果も忘れたのか?」
フィン&アルテミス『!』瞠目
アルテミス「まさか…時が、止まっている?」
ケイト「正確には…時の流れを周囲と断絶させ、外に比べて遥かに緩やかにしている。
この国の国王から連絡が取れない場所があるって言われていたが…やっと、理由がわかったよ。
まだ…こちらではアンタレスの封印が解けてから数時間しか経っていない」
フィン(まさか…まだ問題が一つ残っていたとはね…;)
狼狽する中、ここに来るまで決まった足が無いからだと思い込みかかっていた。
だが違った。
森の中に入ると共に、時間の流れが急速に変わることで外に出ることすら遅くなっていた。
アンタレスの中には、取り込まれた本物のアルテミスの姿があるだろうことが簡単に想起された。
ケイト「にしても…厄介だな。
アンタレスというあのモンスター…
アルテミスを取り込んだせいか、神の力を得ている。
迷宮がそれを察知して大暴れするのも時間の問題か?
でもあの終末神の時と同じで、結界のお陰で察知されていないようだ…
仮に世界を滅ぼせる魔法を発動していれば、迷宮は今頃大暴れしてモンスターを生み出し続けていたろうな。
お守りごと取り込んだことで緊急時と察して自動で発動したようだが…
この封印も長くは持たなそうだ」
淡々と遺跡の空中で顎に手を当てて分析し出した。