第55章 事件
「んだからよお…
俺ぁ…この国に骨さ埋める心積もりだ。
どういう経緯があったかは…オラも知ってる。
んでも…大事にするよう、言ってくんろ。
…お前のお陰で、オラも嫁っこも赤子も無事で済んだ。
今こうして生きられんのはお前のお陰だ。
だから…自分の命を軽く見てんじゃねえ!ってな」
フィン「ああ…」
「俺達の命さ救ってくれた恩人に報いれなんだら、死んでも死にきれねえや。
少なくとも、先には死ぬなってよお。伝えてやってくんねえかな?」
フィン「わかった…
一字一句間違いなく、しっかりと伝えておくよ」微笑
「ん!!(頷)
任せだぞ?」
フィン「ああ」微笑&頷
そう頷く中、店主の妻によって綺麗に盛り付けされた刺身が手渡された。
持って帰る目的で買ったものか確認した後、金額を渡そうとした。
だが…市民カードでの支払いもどっちもできるようなのだが……
「んだから貰えねえって!!;」たじたじ
フィン「せめて割引価格でも」
「んじゃ全額3割だけの支払いでいい!;」たじっ
フィン「いや、気が済まない!せめて半額だけでも」
「あー、負けた!;」
フィン(よしっ!)ぐっ!(サムズアップ)
テロップ『立場が逆転した!』
その後…僕は金額をちゃんと支払ってから、魚屋を出て家へと足早に歩いて行った。
次第にそれは速足、駆け足、疾走とどんどん早くなり…
気付けば、家へ向けて全力で走っていった。
早く喜ぶ顔が見たい。
周囲からの習慣起因とは言え、ケイトの自らの命や死を軽視する癖を何とかしたい。
何よりも大切だと想う者が僕以外にも、他にもいたと伝えてやりたい。
胸の内で湧き上がる想いのまま、僕は直走り…ケイトのもとへと直接向かった。
台所を超え、吹き抜けを利用して一気に3階へ辿り着き、寝ているケイトへ飛び付いた。
勿論飛び起きられたが、気にせず抱き締めた。大事だと、愛していると、何度も伝えるように――ケイトの唇へ、僕の唇を何度も何度も重ね合わせながら……