第54章 市民カード
市民カードは…たとえ他人からカード自体を取ろうとされたり、お金を取ろうとされようとも
即座に取ろうとする相手の力に応じて、取られないよう自然と力が加わるようになっており、同時に本人の同意のないそれは犯罪行為となるので結界により固まらせ、駆け付けた防衛隊に連行される。
市民カードでは…お爺さんとの会話、五体不満足の相手との会話もまた成り立たせることができる。
入力ボタンに触れただけで伝えたい言葉が自動的に声となって伝わり、意思疏通を可能としたのだ。
早い話が、頭で考えたこと、思ったことが口を介さずに伝えたい者へ向けて伝わる。
入力自体が伝えたいことを念じながら入力ボタンを押すだけで叶う為、手間が生じないのだ。
その為、障害者からは愛用かつ絶大に称賛されている。
後に…市民になろうとする者はうなぎ登りに増えていき、スカイボードの医療効果(1357ページ参照)の件も相まって後押しされ続けた。
治療場での寝ているだけで治るのもまた、スカイボードの医療効果と同じ原理を応用して研究チームが作ったものらしい。
当時は神に至ったわけでもなかったので、理を形として示す魔術式自体生み出されていなかった。
つまりを言うと、これが史上初の人が初めて作った魔術式ということになる。
ケイトと僕が確認した所…綺麗に狙った理のみを式で表わせており、研究チームの質の高さに感嘆するばかりだった。
こうして…国は繁栄の礎となる神器を携え、未来永劫星が滅ぶまで続いていくことになる。
それを知るのは、これから先もなお生き続ける存在…悠久を生きる神のみなのであった。
問題は魔力が無ければ魔術式が起動しない点のみなのだが…
『魔力を発し続ける魔術式』というものまで、後に研究チームによって生み出されたのは言うまでもない。
言うまでもなくといった態度で国の力になるものを次々生み出していく研究チームに、僕等は発明した者達を称えると共に報奨金を与える制度を作った。
それらの事態に伴い…
「空中都市ならぬ学術研究都市コクーンは安泰だろう」と、6月19日の段階で実しやかに囁かれたのだった。
(学術研究都市に関しては1880ページ、51章参照)
建国6月11日(1655ページ、46章参照)から僅か8日という、歴史上誰もが見たこともないほどの短期間に渡る完成だった。