第54章 市民カード
誰の中にも『神気』はある。
人を重んじ、思いやり、寄り添わんとする。
それこそが神聖な意思であり、人が人として生きていく上では決して欠かしてはならないものである。
賑やかなこの国、コクーンでは…互いに与え合い、助け合い、支え合うことで
精霊の森、精霊王の森、精霊神の森と同じく、神聖な気が満ち満ちる環境が整っている。
それらにより…その互いへの心掛けの継続に伴い、国内に神気が満ち溢れ続けているのが現状である。
我が国コクーンの役所内にある神石は神気を吸収し、増幅し、国内へ放出、循環させ…
その上で余ったものを貯蓄し、その神気を神の力として使用を行使している。
市民カードの作成、結界の維持、働いた者達への金額分配、空間収納庫の時間停止及び容量無限大、等々…使用方法は多岐に渡る。
雲王国エリアでの建築の際、神の力は必要不可欠である。
だが彼女は生み出した。
そんなことをせずとも、魔力を流し込むだけで自然とイメージ通りの固さに固まらせる魔術式を。
理に直接働きかけるそれは、精神力がなくては成り立たない魔法とは違い、魔力だけで成り立つ為別の名で呼ばれており、魔術として有名になっている。
魔術式の研究もまた、特別学び舎の研究科にある。
そこには数多の魔術式があり、日々研究に勤しんでいる。
その内容もまた異常に多く…
共通点の模索、仕組み、公式、係数性…
魔術式に刻まれている各々の線の役割は何なのか、どのようなメカニズムで事象に発展しているのかの分析、等々である。
国民一人一人…各々に与えられた空間収納庫は、互いの空間が干渉し合わないようになっており
本人以外には出せないように設定されている。
市民カードにも同様の機能があり、本人から片時も離れず、落としてもすぐ手元へ戻ってくる。
腕時計のように変形もでき、普段はベルトのようにしている者が数多くいる。
携帯や空間収納庫機能のあるスカイボードもまた、市民カードの空間収納庫内に入れられる。
その上、市民カードは財布代わりにもなるので使いやすい。
料金を払う際、外へお金を出さずとも支払いの所でカードを置くだけで清算が完了してしまう。
その為、支払い後に店から『領収書』が発行されるようになった。
相手へ使った自覚を齎すと共に、得た利益を店がいつでも履歴で確認できるようにした。