第54章 市民カード
そう叫ぶと共に、両腕を背に回されて抱き締めてこられる中…
べりっ
ティオネ「んー;」
ティオナ「ほら、こっち運んで!;」超小声
ずるずる
ぱたんっ
何かと引き剥がし、強引に引きずっていく音がした後…扉が閉まる音がした。
助かった…
聞いていて居た堪れなくなった周囲の心境を感じる中、僕は改めて両腕で力の限り抱き締めた。
フィン「ケイト……
出会いを繰り返す度…共に過ごす度、愛しさが増して仕方がない。
無条件で…何を賭してでも守りたいと、心から願っている」
ちゅっ
そう言った瞬間、ケイトは行動で返事をした。
愛していると、そう念じながら僕の唇へ唇を重ねた。
フィン「ああ…僕も愛している」ふっ
そう抱き締め合い、貪り合うかのように求め合った。
互いの温もりを、愛情を…全てを……
一度失い、再び出会い…また失い……ようやく出会えた。
たとえ忘れてしまったとしても…何度でも、君を求めた。
何度でも…君を追い掛けた。
君以外など…考えられなかった。
それほどの所まで…来てしまっていた。
今では、ちゃんとわかる。
記憶も蘇ってから、何故これほどに想いが深いのか…やっと理解できた。
また、喪いたくない…
また、離れたくない…放したくない……
そう、自然と願っているのだろう。心も、魂も、霊体も…
自分の全てが…それを否定している。
いずれ来るだろう別れを、また再び死別することを。
絶対にさせない。させてはいけない。耐えられない。
そう…感情が、僕という存在の全てが強く訴えかけていた。
フィン「ケイト…もう…隠し事は、もうないね?」
百度目となるキスを終えた後、ようやく人心地がつき…抱き締めたまま尋ねた。
オラリオの破壊を望む神エニュオは、モンスターに食われて穢れた精霊となったブランシェが地下で怪人ごと皆纏めて食べたとの供述から問題ないと見ていい。
が、念押しのつもりで聞いた。
ギルドでのそれがあったからこそだ。←2036~2039ページ参照
始祖神の記憶に飲まれそうになっていたという前例もある。←737,1075~1079ページ参照
ウレイオス、始祖神の抱えているそれを…もう抱え込んでいないとは限らない。
そう考えてのことだったが…それが杞憂に終わることは無かった。