第54章 市民カード
と同時に…
申し訳なさが込み上げてきた。
ケイト「……ごめん」
フィン「ん?」
ケイト「………ごめんっ」
フィン「何があったんだい?」
ケイト「……育ての家族を…取った」
フィン「?」
ケイト「…今までのことが夢だって…そう…思いたかった。
夢の中の、お父さんとお母さんと…シルキーとの思い出に浸りたかった。
喪ったあの時のことが、それ以降のことも全部…夢だって思ってしまいたかった」ぽろっ
フィン「!」
ケイト「…私は…今ここにある全部を、夢だって思ってしまった(ぽとぽと)←滂沱の涙が双眸から落ちていく
思いたかった…
あんな喪い方をするぐらいなら…そうだって、思いたくって…実行してしまった。
どっちも…掛け替えのないものの、はずなのに。
母親になったのに…アルやディのことまでっ……
母親失格だ…妻としてあるまじき行為でっ;;」ひっく
なでなで
ぐいっ!
泣きじゃくる中、フィンは徐に右手で撫でていた私の頭から手を離し
背に右腕を回して引き寄せ、そのまま抱き締めてきた。
ふとフィンの左腕を見やると、熟睡しているティオネにしがみ付かれていた。
フィン「…気にしないでいい」
ケイト「気にする!!;」
フィン「その苦痛は…よく知っている」
ケイト「っ…(ぎり)
それでも…裏切り…行為だ;」
フィン「…裏切りじゃない」
ケイト「でも」
フィン「思い出に浸る行為は…悪かい?」
ケイト「……ううん」
フィン「だろう?
なら、責める道理もない。
君が、自分自身を責める道理も同様にだ」
ケイト「…」
フィン「でも君は、申し訳なさがかなり出てきてる。
表に出るほど深い感情のままに暴走している状態だ。
だから…そんな風に思わなくていい」
ケイト「…けれど
フィン「わからないのかい?
今君を責めているのは、君だけだ。
僕は…その想いに共感できる。
たとえ今あるものへの否定だとしても、そうなればと望んでしまうのはよくあることだ。
だから…それを責める資格は、誰にもない。
凄惨なことがあったのなら、そう思って然るべきなんだ」なでなで
再び頭を撫でられる中…涙が浮かぶ。
共感…承認欲求…様々な欲が、一瞬で満たされていくのを感じた。