第54章 市民カード
・夢・終
ケイト「…(夢だと、認めてしまいたい。
あの苦痛が…夢に変わるのなら…その方が、よっぽど」
すたすた
そう考えながらリビングの扉へ歩み寄り
手を掛けて開け放ちながら、賑やかなリビングへと足を踏み入れた瞬間…
急に、景色が変わった。
ケイト「!!」瞠目
愕然とした…
夢だと思いたかった背景…それが…
今、急に…目の前へ訪れた。
ケイト「あ…ぁぁっ……」
シルキーを抱き上げるまでもなく、ありありと焼き付けられる…
抱き締めてもなお動かず、不思議と神の力も発動せず……
ケイト「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!!!」
泣き叫ぶ他なかった。
気付けば――再び引き戻されていた。
シルキー「姉ちゃん^^」
ケイト「!シルキー!」ぱあっ!&微笑
抱き締めた瞬間…喪った当時の温もりと血がこびりついた。
再び絶叫する中…なおもそれは矢継ぎ早に続いていく。
手を伸ばしてもなお届かず、治らないそれに…
負けじと手を伸ばした。
負けたくなかった。喪いたくなかった。
だが…しかし……過去はどうあっても過去…
変わることなど、あるはずも無かった。
ケイト「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!!!」
気付けば…左手を天井へ差し伸ばしたまま叫んでいた。
ケイト「はあっ…はあっ」
息が切れ、肩が上下に揺れる中…ある言葉が掛けられた。
フィン「大丈夫か?」
心配そうな眼で…お父さんと同じように左肩に右手を置き、心配してくれた。
心配してくれる者などいなかった。
育ての家族、生みの母、姉ぐらいしか…
ケイト「っ;;
ひっく;ぅぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ;;
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ;;」
縋り付いて泣き震え、慟哭と共に咽び泣く中…
フィンは、何度も何度も背を撫でてくれた。「大丈夫だ」と、言葉を添えながら……
私が泣き止むその瞬間まで…その手を離すことを由としなかった。
それが…とても有り難かった――