第53章 メシア・デイ
フィン「誹謗中傷、冤罪、罵詈雑言…捲し立てられながらも、己という在り方は決して変えなかった。
自分は自分、他は他、その在り方は…
他人の歴史を、そうなるまでの経緯を一切否定しない…『優しい在り方』だと僕は思う。
君が見つけたその在り方は君の誇りなのだろうし…事実、僕もそう思っている。
胸を張っていい。
君は、やれるだけのことを全てやったんだ。
その段階にいる彼等彼女等は聞く耳を持たないのも仕方ない。
君からすればやりきれないだろうけれどね。
そんな君だから…僕は、恋に落ちた」
ケイト「!!」瞠目
フィン「君のことを、心から誇りに思っている」微笑
ケイト「ぶわっ!)
っ;;
ぅっっ」ぼとっぼとととっ
大粒の涙を零して嗚咽する彼女を強く抱き締め、唇を奪った。
ケイト「!!」
フィン「君のそれもまた…君が君である為に必要な歴史だ。
僕が僕である為に…両親の死が欠かせなかったように。
数多の出来事は全て、誰かが誰かである為に通じている。
その時に何を為し、何を残せるか…誰しもに課せられた使命でもある。
要はそれを理解できるか否か…
と言っても…これらは君から教わったことだ。
君の在り方から、僕は学んだ。
人がどう在ろうとするかなど、人が変えられるものではない。本人にしか変えられはしない。
君は、僕を変えてくれた。今という時へと巡り会わせてくれた。
どんな過去も、歴史も、経緯も…全てを包み込んで、愛してやまないでくれた。
それがとても喜ばしいし、何よりも嬉しくすらある。
それまでの全てが…出来事が……
辛い想いも、感情も…何もかもが…死にたくなる程の絶望も含めたそれらまでもが――決して欠かしてはならないものなのだと気付かせてくれた。
子が産まれて、その想いはより顕著になった。
君に示されていなければ、僕は未だに変わってなどはいなかっただろう。
だからこそ…想う。
君に出会わなかった未来を…考えるだけでぞっとする程、今との格差は激しい。
幸せを掴んで、得て…子供達の未来も、君との時間も…何よりも欠かせなくなる程に……
愛してやまない、君の代わりはどこにもいない。アルも、ディも…
心からね。
わかってくれるかな?」
ケイト「わかるっ;」ぐすっ
「ありがとう」と胸へ縋り付く彼女を、僕は優しく抱いた。