第53章 メシア・デイ
ケイト「どうすりゃ…よかったのか。
誰も傷付かない未来なんて、どこにもない。
傷付けても殴っても叫んでも一切意に介しはしない。聞く耳なんて持たれない。
不要な傷を増やさない為には、ああする以外…何も選択肢なんてない。
でもそうすれば…あいつらは、残酷な言動を取り続けた罪で地獄に落ちる。
たとえ聞く耳を持ってもらって、諭したとしても…思い通りに動いてくれるとは限らない。ましてや信じられるわけもない。
だとしたら…そう思うしかないじゃん……
そう思わないと…私のしてきたことって何だったんだよ。
必死に示して、それでも伝わんなくって…
今でも自分だけが正しいって言い続けてる輩に、地獄落ちが待っている輩に…どうしろって言うんだよっ;;
わかんないよっっ!!」
ぼろぼろと涙を零すケイトに、僕は抱き締めて頭を撫でた。
フィン「ああ……わかっていたよ、僕は。
どうにかして回避して欲しい。
それでもその方法が皆無だという現実に対する苦悩、その裏返しなのだということを。
君のような聖人君子な人間は…人の為に自分を殺せる強者は、そうはいない。
弱い心のまま人へ当たり散らして当然と、他へ叫んで自分こそが正しいとふんぞり返る弱者ばかりだ。
他の在り方を受け入れず、聞く耳も持たず、高圧的に叫んで、是が非でも我を通そうとする。
そういう類の人間は、大抵が自分こそが一番大事で他人は二の次と考える輩に多い。
まだ彼等彼女等は学ぶ途中だったんだろう。
何故疑問に思わない!?と神から叱られながらね。
その為に必要な過程で、地獄落ちなんだ。
君は…本当は、わかっているんだろう?
それでも…それがわかっているからこそ、耐えられない。見ていられない。
しかし、それ以外の選択肢が何もない。
結局はどちらを重んじるかで、今後取る言動は変わっていく。
君は他を取った。己の意思も、感情も、心までも犠牲にしてでも…大事にすることを選んだ。
他の人には…決してできない在り方だ」
背を撫でて、宥めるようにぽんぽんっと軽く叩いた。
アルとディは知らず存ぜずで、少し離れた所で自由に修業をしていた。