第53章 メシア・デイ
フィン「好きだよ」
ケイト「何で!!?」
フィン「……建前はいい」
ぽんっぽんっ
そう言いながら、遠くを睨視するケイトの頭を撫でた。
フィン「…そろそろ、本音を言ったらどうだい?」微笑
ケイト「…」ぽとっ
雫が零れ落ちる中…ようやく彼女は零した。
できることなら――誰も傷付いて欲しくはない、と
ケイト「ああでも思ってないと…気が狂いそうになる。
傷付いて欲しくなかった。
傷付けて同じ側の人間になんてなりたくなかった。
具体的に説明されないとわかんないから…
誰も話さずに察しろ以外に無くて、おかしいのは自分だけだって言われて…
私自身、当時は生みの親の環境による常識しかわかんなくってさ。しちゃいけないってわかってたからやらないようにしてた。
精一杯気遣った気でいた。同じ思いを味合わせたくないって…必死に合わせた。
でも結局は、相手に全て悪とされた。相手の常識がわかんなかった。
負けず嫌いだから…是が非でも抵抗しなかった。
抵抗したら負けだって、同じに陥る=負けって捉えてた。
人を傷付ける言動を悪とも捉えない、そういう言動を取ってもなお意に介さない類の…生みの父と同じ類の人間になんて、なりたくはなかった。
私と関わることで得た傷、それ以上に酷いことをやっているのはそちらだと示したかった。
私は一切やり返していない。やり返せば同じになる。続いていく。
そうなれば何も残らない…争いも空虚も、それ以外は…何も……
だから耐えた。何をされても抵抗もせず示し続けた。
同じ思いを味合わせたくない一心での言動だって。
そうする以外に示し方がわかんなかった。
どれだけ耐えても、耐えても、耐え続けても…相手は見向きもしないんだぜ?(ぽとっ)
聞く耳も持ちやしない。
傷を増やさないよう頑張ってても、どれだけ必死に努力しても…全部無視して殺してくるんだ。
そりゃ地獄に落ちて当然だよな、あんな奴等。
最初はさ…苦しみも痛みも味合わせたくなんかなかった。
それだけだった。それ以外の意図も他意も一切無かった。
なのにさ…地獄落ちが確定所か、一切揺るがないまでになっていくのが顕著に見えた。
だからと言って傷付けたくない、傷付けたとしても止まらないのは目に見えている、加速するのが見える。
どうすりゃ…よかったんだろうな」ぼろぼろ