第53章 メシア・デイ
ケイト「姉は自分のせいで死んだ、心配してくれた。友達がいないことを。
唯一怒ったことがあるのは辛いのはこっちだと言われた時。
友達と遊んで、気を紛らわせられる時間があるだけマシだって怒った。そんな時間さえも無かったから。
母も同じだ。
思い通りに行かなかったらヒステリックに喚かれてたけど…愛してくれるだけ嬉しかった。
育ての家族も…あれほど…居心地がよかったのは、あの当時では初めてで。差別もされなくて。
変なのに。お前はお前だって…愛情を、たくさん…たくさん、注いでくれた。
実の娘のシルキーと同じぐらいに、大切にしてくれた。
なのに…なのに……私が…私がっ!!」瞑目
ぽんぽんっ
胸の奥で蟠り、つっかえ続けていた言葉。
溜め込まれていた想い…ようやく吐き出された感情。
それらも相まってか、滂沱の涙を零し続けていた。
その頭を左手で手繰り寄せ、胸に顔を埋めさせ…左腕の中に閉じ込めながら、背を叩いた。
泣き続けること十数分後…ようやく、彼女は泣き終えた。
堰が切れたような涙が涸れた。
いや、冷静さを取り戻せるぐらいにまで…『心』が回復したのだろう。
ケイト「あーーーーーーーーーー。
吐き出したらすっきりした。ありがとう。
それとごめん!…嫌な思いさせたなら、ホント…ごめん;」土下座
何を思ったか、先程まで机を挟んで椅子に座って向かい合っていたというのに
机の横の床に座って、土下座を敢行すると共に謝罪してきた。
フィン「気にしないでくれ。
今に始まったことではないだろう?
それに僕も聞いてもらっている側だし、人のことをとやかく言えた側じゃない。
それと…障害というけれど、それ程顕著ではないと思うよ。
第一…ちゃんと、会話が成り立っているんだからね」
ケイト「……」ぱちくり
フィン「言葉を真に受けてしまうのもあるけれど
それは意味のすれ違いさえ起こらないようにすれば、問題になんて発展しようがない。
真面目に人の話を聞こうとするし、指摘すれば努力しようと邁進するし、熱心だし…いい人だと思うよ、僕は」片目瞑&微笑
ケイト「…」瞠目
今一実感を得ていないようだね。
まあ無理もない。
上辺だけの善意なんて何の救いにもならない。
寧ろ…中途半端な優しさなんて、傷を増やす要因にしかなり得ない。