第53章 メシア・デイ
ケイト「心配して掛ける声も、大事に想ってのそれなんかじゃなかった。
単なる気まぐれで、後は何も気になんて掛けやしない。
全部…全部……(すっ)←天井を見上げる
何も…かもを………殺し尽くしてやりたかった!」
絞り出す声は、不意に鼻声となり…涙が一つ二つと川を増やしていく。
ケイト「でもそうしたら…生みの父親と同じだ。いじめっ子と同じだ。
蹂躙しても、暴れ散らしても、当たり散らしても…何も残らない。
この感情だけは…どうあっても消えてはくれない!;
何をやったって消えてくれないっ!!;」ぼろぼろ
「私は…何をやっていたんだ!」と嘆き俯く彼女の頭を、僕は優しく左手で撫でた。
右手の手袋を取り
強く握り締めてくるケイトの左手を、右手で直にしっかりと握り締めてから。
ケイト「ぐすっ)……
きっと…苦しませる為なら何だってやっただろうさ。
たった一人になるよう追い込み続けて…関わる気力さえも削がさせておいて……
皆…笑ってんだ。
見せつけるように…お前とは違うぞってばかりにさ……
そうして……ようやく…ようやく…わかった。
合わない人は異物、誰にも合わない人は死ね。消えろ。苦しめていい。
吐き掛ける異物として、笑って苦しませて満足する。
っ…(つー)←涙が頬を伝う
生みの父親と、何が違う?
私は…何も、視えていなかった。
霊感で負の感情が見えても…そこまで、すぐに理解なんて出来なかった。
皆が当たり前のように出来ることが出来ない。
そういう人を率先して捌け口にして、ぶつける矛先を向けて…皆、笑ってんだ。
同じようにする人なんて、山ほどいた。
助けようとしない人しか居なかった。
どこに行っても、何をされても、どこでも何でも同じだった…
期待なんて、夢なんて、希望も何もかもが無駄だった。邪魔なものでしかなかった。
人間には…そういう人は、この街には一人としていないんだって……
精霊王の森から見て、やっとわかった。
唯一の救いは…動物達だった。
それ以外…まともなものでさえもいなかった。
居なかったんだ…誰一人として。
今目の前にある幸せも、オラリオに来てから得た幸せも、育ての家族以外は、全部!;」