第53章 メシア・デイ
ケイト「「好きな人は?」って聞かれて、その人の名を出した時…
何故か、周囲から恋をしているってことにされていた。
惹かれてはいた。
それに間違いはないと思う。
でも、結婚とかそういうのは考えてない。
純粋な好意だった。
心配してくれてありがとう。力になりたいなってくらいの…些細な好意。謝意とも言い換えられるものだった。
男の人に対して、初めて抱いたものだった。
私の家族には…生みの父しか、居なかったからさ。
でも、さ…そいつ…私がいじめられていた時、どうしていたと思う?
恋をしているっていじめっ子から指摘された時、どうしたと思う?
皆の前で、断った。
一人で呼び出すなり、色々方法はあるだろ?
でも、そんなことはしなかった。
ましてや…さらに、いじめの時に加担しても居たんだ。
だから……余計…再会した時、死ぬほどに苦しかった」
ぽとっ
涙…?
不意に双眸から零れた雫は…音を立てて机へと落ちた。
恐らく…あの時のことが、当時の感覚や感情もリアルに思い起こされている…
いじめられていた当時のそれも含めて…今のケイトの頭の中でよぎっているんだろう。
あの、再会した時のように…←162,163ページ参照
ケイト「何故…見誤ったんだろうな。
いや…それ以前に…何故、気付かなかったんだろうな。
皆…同じなのに。
父と同じで…他人の在り方を、自らに合わせろと強要して、合う人同士で違う個人を責め立てて。
徒党を組んで、虎の威を借りて…こちらが正義だとばかりに蹂躙し続けて…
当時の環境も、何もかもを…常識までも同じだと決め込んで。知ってて当然だと押し付けて…
目に映らない障害を抱いていて、それでもなお強引に迫られる……
強迫観念しか…私の目には…何も映らなかった。
自分さえよければそれでいい。
こいつ一人など、どうなったっていい…
そんな想いにすら…私は、気付けなかった;」ぽろっ
抱いていた期待…幼いながらに、初めての言葉に…
待って待って待ち続けて…待ち侘びていた「大丈夫?」という問いかけに、盲目になっていたんだろう。
…彼の中では…どうでもいい存在であることに。
自らの平穏と幸せの為ならいつでも見捨てられる位置にあることさえも気付かぬまま。