第53章 メシア・デイ
とりあえず…必死に宥めた。
それはもう、頑張った。
気付いたらお腹の音が喧嘩を諫めていた。
ケイト「…御飯、食べようか」
フィン「ああ……
そう言えば…朝御飯もまともに食べていなかったね」
ケイト「本当にね;」
それから後…共に雲王国エリアの定食屋で御飯を食べた。
その中で、今までの恋愛事情を聞こうとした所…
その前に当時の環境を、と打ち明けてくれた。
ケイト「私の目から見れば…それは、揺るぎようのない現実だった。
幻想に浸っているだけだったことに、小学6年の時に気付いた。
皆……苦しんでいる人を見て、矜持を得ているだけだって。
苦しむ様を見て、それを楽しみとして生きている…
男でも女でも関係ない……
誰もが…父親と同じ人にしか、私の目には…私から見た世界には、そうとしか見えなかった。
人を苦しませることに、自分に合わさせることに何の痛みも感じない。
そういう人以外、居やしないんだって…
わかってたのにな…所詮は他人。生みの父の件も全部、他人事でしかない。
苦しんで、足掻いて…それでも…尚更に苦しませて、笑う奴等しかいないんだからさ。
でも小2の時、心配されること自体初めてされた。
初めてだったんだ…
生みの父から、心配されたことなんてなかった。
日常的なものがあんなだからさ。
だから…好意を初めて抱いた。
心配してくれる人なんて…居なかったからさ。
だから余計…父といる時間の方が長いから、そういう人じゃないんだってわかって…嬉しかった。
衝撃的で、大丈夫だって言った後…ありがとうって言ったんだ。
優しい人だって思った。
思っていた…
思いたかった……」
スプーンを手に俯き…
思いを馳せるように遠くを見つめたまま、瞑目し…
ポツリポツリと整理して伝えようとしているようで、僕を見やらないまま語り出した。
ケイト「その時の私は…馬鹿だった……
上辺だけの…
たったちっぽけな、気紛れにも等しい優しさ…
今まで向けられたことのないそれに、憧れを抱いていた…
ちゃんと見てくれる人が、居て欲しかった。
されたかったそれを…一度とは言え与えてくれた。
それだけのことに…心底、浮かれてしまっていたんだ。
…それが…間違いの始まりだとも知らないで」