第53章 メシア・デイ
風の上位精霊、アリア――
絵本や英雄譚、色んな物語に出てくる精霊。
その特徴は…どれもが人の助けとなったこと。
そもそも精霊とは神に最も愛された子供であり、神の分身でもある。
神との違いは完全な不死ではないが何世紀にも及ぶ寿命を持っていること。
そしてエルフと同じ魔法種族(マジックユーザー)であり、エルフ以上の強力な『魔法』と『奇跡』の使い手――
神々と精霊に共通する点は…目の前にすれば誰でもはっきりとわかるほどの「神聖な存在感」にある。
アイズは…迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)の英雄「アルバート」と「アリア」の娘。
無論、『風』は精霊アリアが起因する魔法だ。
そもそもが迷宮神聖譚の時代は『古代』。
隻竜が迷宮の外に出ようと足掻いたことが発端。
その戦いに巻き込まれ、アルバートに生涯寄り添ったアリアも共に消息を絶つ。
時代は変わり、その当時から胃に消化されずに残った遺体が保持されていたと思われる。
奇跡的に、迷宮神聖譚に記された装備に包まれた遺体と思しき男性と、精霊と思われる女性の死体と共に。
アリアが最後の力を振り絞ってのことだろうとも思う。
アイズが言うには…皆は息絶え、気付けば周りだけが変わっていたそうだ。
会話には問題は生じなかったが、ケイトと同じく神聖文字しか書けなかった。
これは推測だが、アリアがアイズを守る為に未来へ時を超えるよう奇跡を起こしたのだと思う。
そして…遺体が残ること、そうなったとしても寄り添い続けることを――
それらの情報を昨日、アイズは打ち明けた。
全力で闘技場でぶつかり合った後
晩御飯を食べ終え、再びケイトへ結婚したいと告白してから…
それまでの過去を…レフィーヤ達がいる前で、洗いざらい語り出した。
ケイトは変わらず受け止めた。
というより、受け入れた。