第53章 メシア・デイ
一日働き、一日休む。
時給1000ヴァリス(1万円)でありながらこの労働条件だ。
物価もそれほど高くなく、ゆったりと過ごせるようになっている。
これは一部の人達から言われていることなのだが…『天国』と呼ばれている。
しかし、精霊の森に何故結界があるのかについてもそれなりの理由がある。
精霊王からの話によると、今から2000年ほど前…
精霊と相性があった幼女を前に、この者なら悪用はしないだろうと静観を決め込んでいたそうだなのだが…
筋骨隆々の中年男性が欲を露わに、大人数を引き連れて森の前に現れて叫んだ。
精霊と友達だと言う幼女を捕まえ、ナイフを突きつけたまま…
人質にすることで入ろうとし、そればかりか入った後で略奪行為を働いたそうだ。
精霊への殺傷行為も厭わず奴隷にしようとする輩もおり、隷属の首輪を用いる者も居たことから精霊達から怒りを呼び…
精霊神と精霊王は自身を見てもなお態度を改めず
あろうことか見世物にしようとする下卑た輩以外いなかったことから堪忍袋の緒が切れ
それまで800年あったヘレイオス街の領主、及び相性のいい人間との親交まで一切を断絶させた上で
『「精霊の住処となる森が位置する場と情報」を他へ教えた者を結界の動力源とする』と取り決めたという。
そうでもしなければ守れないというのもまた、頷ける話だ。
その当時に襲われた精霊達は皆精霊王と精霊神によって助け出されたが、人間への不信感を増長された。
人など…本能や欲望に忠実なだけのハイエナ。
目に見えぬ存在も否定し、全て思い通り動けと傲慢に振る舞い、下手に出れば食って掛かる存在。
そう結論付け、互いで護り合うしかないと守り人達にも波及されていき、信頼できる人間以外の全てを追い出す形を取った。
結果として、人間の守り人は領主のみという形が普通となった。
ただし、自ら外へ出て旅をしようとする精霊は自由にさせていたそうだ。
アイズの母、アリアもまたここの出身(精霊王の森の生まれ)だったらしい。