第52章 メシア・デイ・イヴ
結婚当初では――こうではなかった。
確かに、愛情を育む心積もりはあった。←378ページ参照
だが、団長として責務を全うしなければいけない。
愛情を注ぎはするが、僕自身立場もある。
【勇者】としても、ロキ・ファミリアの団長としても…
何を捨ててでも護り抜こうと思えるかという点については
当時、正直な所「?」で…自分でも何とかできるだろうという過信が強かった。
信頼していた。信用も…
実力も人格も申し分ない、浅慮な真似もしないし極めて慎ましく他の気持ちを思い遣れる。
だが…失いかけた時になって、ケイトが両親と同じ選択を迷わず取った場面になって、ようやく気付いた。
深々と…深みを増していく想いに、死んだとしても切り捨てたくはない。切り捨てられない。
そう、心が叫んでいた。
たとえ野望への利用(648~650ページ参照)だとわかったとしても、ああ言ってくれた。←630,720,721ページ参照
受け入れてくれた。愛してくれた。
何より…心から求め、それごと大好きだとも言ってくれた…
侮蔑されると思っていた、ばらされるかもとも思った。
だが…そんなことは決してしなかった。
愛してやまず、態度で示し続けようとする彼女が…愛おしくて仕方なく、心に…魂にまで、深々と刻み込まれていった。
それからの毎日…
徐々に思いのままに本音を出せるようになり、甘えられるようになる姿を見る度…愛しさが込み上げては堪らなかった。
葛藤する度、前に進み、成長していくそれに…僕は喜びを感じていた。
自分を殺すことを第一としていた彼女が変わったのが、とても嬉しかった。
時を重ねる度、知っていく度、好きなことが生き生きと出来るようになっていく君を見る度…
誰にも渡したくないという欲求が芽生えた。
そればかりか赤子にまで嫉妬し、是が非でも渡すまいとしていた。
それでも愛してくれる姿勢は変わらずで、嬉しがってもいる彼女に堪らなく…欲情してしまう自分もいるわけで……
最早…ケイトのいない人生など、歩みたくないほどに想っていた。
心から…魂から愛し…共に居たいと、望んでいる。
前々世と前世の記憶も蘇り、思い出す度に想いに拍車がかかり続ける。
その内…嫉妬までもが果て無く深まっていき
是が非でも誰にも渡さない為、行動に示すことを選んだ。