第52章 メシア・デイ・イヴ
前世の頃…
父からの命令で祝言をあげさせられることになった。
当時は男尊女卑の風潮が強く、女の意思など最後に回されるのが普通だった。
男の命令にはいつでも聴き、佇まいに至るまで厳しく、教養として強制させられていた。
反論など認められない。口答えなど許されない。
けれど…
そんな時に父上から戦友の息子の結婚相手へとあてがわれ、決められた。
婿入りされた姉上に、息子が産まれたのが要因なのかもしれない。
「お前も家庭を持て」と、最後に言われた。
厄介払いだということに違いはなく、帰ることも許されない当時からすれば遠方への嫁入りだった。
それでも生きていかなければいけない。
おめおめと生き恥を晒すものかと、躍起になっていた。
「どうした?そのような顔をして」
「……何でもありません」
「もっと着崩してもよいぞ?」
「お構いなく。これが私の普段通りです」ふいっ←そっぽを向く
いつ、人の粗(あら)に目を付けられるか、責められるかもわからない。
見せた瞬間に、油断した瞬間に指摘と共に責められるのは定石。
(気取ってないで本性を見せなさい!)ギンッ!
「…ふふっ^^」
「…何でしょうか?」眉顰め
「ほれ」
ついっ
「…;」
「もっと口角をあげよ」
「やめて下さい!」
ぱしっ!
「…ふふっ…
(そのような顔も)できるではないか。
その顔が見たかった^^」にこっ
「!!」
当時…武士は戦国時代ということから、より苦境に立たされていた。
武士は食わねど高楊枝。
武家の娘は有力な武士へ嫁入りをさせられる。繋がりを持つ為に…
道具のように利用され、それで終わるのだと…
しかし…その日、佳境に立たされていたことを後になってから知った。