第52章 メシア・デイ・イヴ
「……立派な最期を、遂げました」←1630ページ参照
伝令の言葉が…縁側で響く。
あの方が帰ってきた。
ただし…遺体となって――
走った方向を見ていたことから、先遣の者達が出て小屋から連れ出したのだそう。
負け戦でありながら無事に帰れたこと、その感謝も込めてと。
手厚く…葬るつもりであることもまた……
使者が帰った後、私は緊張の糸が切れたように膝から床へ崩れ落ちた。
女「嘘つき…(つー)←涙が頬を伝い落ちて行く
帰ってくるって言ったじゃないですかっ」
張り裂けそうな想いが胸を締め付けては焦がしていく。
娘(姉)「母上?」
娘(妹)「どうしたのですか?」
女「あああああああああ!!」
気丈に振る舞わなくてはならない。
武家の妻としてあるまじきことをしてしまった。
滂沱の涙が流れ、喉は声を打ち震わせ…
それ以上に…ある想いに、焦がれていた。
女(…あなたに…会いたいっ)涙
お腹の子は…流産してしまった。
精神的な負担があまりに大きく、どうしようもなかった。
あの方が生前から懇意にして下さっていた農家や、あの方が助けた方達の助けもあり
皆に支えられ、私と娘は…戦国の世を生き抜くことができた。
江戸の世になり、死に行く中…あの人に会うことを平に願った。
あの方は…三途の川を渡り、閻魔大王様の間から出てすぐの場所で…静座して待って下さっていた。
男「待ち侘びたぞ」
その声に振り向くと…すぐ傍に、あなたがいてくれた。
女「!!」瞠目
男「随分と…待たせてしまったな」苦笑
女「いいえ…いいえっ(ぽとっ)
あなたと…また……会えた…
それだけでっ……
夢のようです」ぽろぽろ
男「……ずっと…見守っていた。
やっとだ……
今…帰ったぞ…」
女「はいっ
待ち焦がれておりました^^」
こうして…霊体同士の逢瀬は果たされた。
抱き締め合う中…強く、強く、焦がれていった。
何度も何度も結ばれ合い、互いに口吸いを求め続けていた。
閻魔大王様の間で魂と別離させられたことから
魂同士は出会うこともなく
強烈な想いが染み付いたそれは…いつしか……←フィンの前世(女性)の声
互いへと惹かれていった…←フィンの声