第52章 メシア・デイ・イヴ
フィン「…たとえ眠っている間にやったとしても
手塩に掛けて育ててきたそれを殺すのは、さぞかし苦しいだろう。
殺される動物も…懸命に生きているというのに、人間の勝手の為に殺しているようなものだ。
だからこそ情愛を抱かず、ただ美味しく育つようにとただの作業として行い、別々に分けている。
育てる人、解剖する人、配達する人、売る人…
それら全てで食事というのは成り立っている。
買い、調理し、食べる。そこまでで一つとして…
残酷なことをしている。
それは、火を見るより明らかだ。
しかし、それを無くしてしまえば…食物連鎖のバランスをきたす。
それでも…?」
ケイト「…増え過ぎないよう、数を調節すればいい。
それも研究科のある部門の人達に任せてある。
一大事業(一大プロジェクト)として、受け入れられた。
料理全般に向いた万能の肉、各部門に向いた肉、鶏肉や豚肉や牛肉等々…
それらは全て、例の神器で流し込まれた魔力を下に作り出せる。
徐々に、バランスを崩さないよう調節しながら移行していっている。
安定した量を常に出せるし、注文が殺到した時でも即座に大量に作り出せるように。
食事や環境で肉の品質は大幅に崩れやすい。
個体にもよるし性格もまた関連しているのだろうけれど、それで値が下がり安定した給料を得られないことも多い。
というのが…畜産業をしている者達の実情だった。
畜産業を、生産業とふれあい業へ移行。
最高の肉は既に完成している。
もう…実験動物のように束縛させるのは見たくない。
いい加減、自由にさせたいというのもある」
フィン「…そこまで考えた上で、か」
リヴェリア「…悪くない話ではあるが…
大丈夫なのか?
いや、だからこそ徐々にか」顎に手を当て思案
ケイト「…うん…
動物達も…喜んではいたよ。
でも、これからどうすればいいんだろうって戸惑ってた感じだった。
自分の意思を持っていい。そう…皆から言われた時の私みたいに、戸惑っていた」
フィン「自分と重ねていたというわけか…
やっと合点がいったよ(片目瞑&溜息)
君は…畜産されて殺されていく動物達を、自分と重ねて見ていたというわけだ。
確かに、意思も心も無いものとされ、他人の勝手に合わせろと殺されていくのは…
君が人から遭わされていた扱いと類似している」