第52章 メシア・デイ・イヴ
皆、命がある。
生ある限り、死は隣り合わせである。
子を産み、また次へと繋げていく。
食事とは…命を食らう行為であること…
それが決して変わらないのはわかっている。
それでも…奪わなくていい命まで奪いたくはない。
でも食糧となるそれは必要なもので…
だからこそ、食料を粗末にしてはならないわけで……
できるなら、殺されなくていい世界にしたい。
でも堕落させたいわけでもない。
それらの葛藤の末、親になったことから…
繋げてきた子の命を奪い食われることが忍びないという心境に陥り、気付けば作っていたという。
生ある者は…必ず死ぬ……
だが、だからこそ…新たな命を愛しく思える。
子供が産まれた時…守る為に自分は存在するのだと、本能的に思った。
これは所謂…種の生存本能に他ならないのだろう。
フィン「なるほどね…
確かに、立場が変われば…僕達は殺されて食われ、アルやディは育てられる。
そして大きくなって子を産んで一定まで育て終わった後、食用肉とする為に殺される。
これほど残酷なことは無いだろう。
だが、生きていく上ではどうしても必要なことだ」
ケイト「私は…私なら……
登録させた肉を、魔力を凝集させるだけで生み出すことが出来る。
まず台の上に肉を置いてスイッチを入れ、魔力を流し込む。
その際に隅々まで透過、かつ循環させることで分析&登録させる。
後は台からどけて、魔力を凝集させてそれへ変化させることで生み出し、実物の肉とする。
臨床実験はもう済んでいるし、栄養分も何もかもが同じだった。
病原菌がなく、栄養分も豊富、肉付きもよく美味しく作れる。
食べた人に悪影響も無く、誰もが食べれるものだった。
美味しく食べられる為に育つなんて…
って…無責任かもしれないけれど…その想いに、嘘は付けない。
その末に辿り着いたのが、動物や植物を殺されなくて済む神器…
『実体化魔力装置』なんだ。
消化されて糞や尿として体外へ出てきた後は、魔力へと戻る。
難点はと言うと…食べるということの重みが減ること。
かもしれない…
でも…できるのに、できないまま放置なんていうのは…赦せなかった。
許したくなかったんだ…
そう思う自分がいるのなら、それが自分だから。
目を…背けられなかった……殺処分される悲鳴から」