第50章 秘密
ケイト「もう…遅い。
審判の時を経て、私は死ぬ。
今や…精霊王の森は、世界中に知られてしまった。
元気な内ならいい。
でも…いつでも元気な訳じゃない。誰だって弱る時はある。
大きな力を持てば、それを振るってでも奪おうとするのが人間だ。
英雄譚アルルェーチェが明かされ、森について知らしめられた後…
「子供なら入れるから資源を取ってこい、さもなくば殺す」と脅す大人ばかりになった。
それに精霊王は怒って、二度と立ち入りができないようにしてる。
でも…必ず、限界は来る。
力にピークがあるように、必ず滅ばないものなんてこの世には一つとしてない。
その為に…精霊神のもとで裁きを受けなければいけない。
滅びの要因を齎した人物として…軽蔑されるんだろうなあ^^;」
からん
ことりと、ソファーの前にある机上へ置かれたままのグラス。
その中の氷が、音を立てて崩れる。
暗闇の中、月明りに陰りが刺す…
雲が横切り、一時の暗影が刺し、暗闇は増してゆく。
ケイト「私の魂は…地獄にも、天国にも行けない。
お別れだ^^」
そう寂しそうに笑い掛けられる中、ある言葉が…僕の頭を占めていた。
打ち明ける前…彼女が言っていた言葉を……
ケイト『こればっかりは…秘匿しておいて欲しい。誰にも話さないと誓ってくれ。
英雄譚にも載せるわけにはいかない。先祖代々に渡って、護られてきたものだ。
そして…子孫にまで迷惑をかけるわけにもいかない。
頼む』深々お辞儀←1038ページ参照
あの時…きちんと言われていた。
しかし…「ケイトのことやから大丈夫やろ」とロキから言われるがままに
軽く捉え、本に載せることへ邁進していくロキに対して…止めようとしなかった。
彼女を認めず、ひたすらに罵倒したり好き勝手な言葉をぶつけ続ける輩を黙らせたかったというのもある。
だが…それが『生死を分かつ要因』になるなど、誰も思いもしなかった。