第50章 秘密
ケイトも…僕も…やはり、似た者同士なのかもしれない。
過去を、傷を、痛みを、決して無かったことにできない。
無かったことにすれば、幸せを求めて堪能してしまえば
それまで乗り越えてきた全てが、何の意味も無いものへ変わってしまう。
『それまで乗り越えてきたものは、一体何だったのか』と…虚無感へ苛まれ、堕ちてゆく。
『あの傷は…想いは、一体何だったんだ?』
幾度となく、傷を抱えていない人を前に…嫉妬に似た感情が、沸き上がってはすぐ激情へと変わっていった。
普通の基準を変えてしまえば、過去の傷が思い起こされればすぐ耐えられなくなってしまう…
というのも、あったのかもしれない。
人並みの幸せに関心を持ってしまったら、求めてしまえばここまでの全ての道のりが無駄になってしまう。
心の根底でいつまでも燻ぶり、殺し続けてきた。
成し遂げたい使命の為に、一族の光となる為に…そうし続けてきた。
そう在り続けるつもりだった。例え、何があろうとも…
彼女に出会い、『恋』を知るまでは……
しかし…今でこそ、得られる幸せを噛み締めることが出来た。
互いに、己で止めていた時間を動かし合うことが出来た。
求め、欲し、愛し、想いをありのままに叫び…産声をようやく上げることが出来るようになった。
そのことに後悔はしていないし、そのお陰で得られたそれが…とても愛おしく、喜ばしくすらある。
神にまで辿り着けた理由が…今では、よくわかる。
ケイト「ちょっとフィン、手伝って!;
って何でフィンまで泣いてんの!!?;」
アル&ディ『びゃあああああああああああ!!!;』
ケイト「はいはい、ごめんってば!!;
ちょっとふぃいいん!!!;」
フィン「ぷっ…はっはっはっ^^//」
ケイト「フィンってば、こらあああ!!;
こっち来て!;ほらディをあやしてええ!!;」
フィン「僕は…君に出会う為に、産まれてきたのかもしれない」ぐすっ
ケイト「そうだね!私もそう思うよ!
と言うかそんなの今はどうでもいいからぱっぱとあやして!!;
ほらアル!つられ泣きしないの、頑張って!!;」
アル「うびゃあああああ!!!;;」
エビぞりになりながら、いやいやと泣きじゃくるアルを腕に抱き、必死にケイトは宥める。
同様に僕の腕の中でディも泣きじゃくる中…僕もまた、涙を零した。