第48章 死
フィン「出来なくなりたくてなってる人なんていない。
出来ないそれが障害だったりする。
ケイトの場合は、それが目に見えない分、誤解されただけ。
悪質な人が集団の中に居て、それからハブられて差別を受け、孤立させられたのだと思うよ」
そう、ケイトの頭を撫でながら団長は言った。
その間、当のケイトはと言うと…ようやく安心したみたいで、眠りについていた。
フィン「僕達と出会った後…記憶を取り戻した後で混乱していただろう?
殴られないのはおかしい、罵倒されないのもおかしい、高圧的に強要されて意見を聞かれないのが普通なのにおかしい。
混乱して、自分の持っていた普通が…他の普通と違っていた場合…
強要されて、言いなりに否定もせずに受け入れなければいけない状況下へと追い込まれる。
心理的な作戦、画策、集団による印象操作、裏で根回しする輩…
悪魔にしか、穢れた存在としか見えなかったとも言っていたし…。
些細な言動で人を振り回し、それが正義とし、何をやっても許されて当然と、ケイトにだけは何でもやっている。
謝りさえすれば許されるとばかりに、一年の内にし続けたそれに対する謝罪回数は一回のみ。
他もまた悪いことをしている自覚がない。
何をしてもいいと、鬱憤晴らしか遊び感覚で楽しいことをしているだけ。
それも本人や周囲にとってだけ、された側の気持ちも心痛などもどうでもいい。
知っていればやらなかったと言うが、訴え掛けてもホラ吹き呼ばわりして信じなかったくせにどの口が言うか。
謝らなかったのではなく、日常的な家庭上の特殊な事情、それも慣習で出来なくなっていた。
第一…君は過去の水晶で見ただろうけれど、あれでは謝る所ではないだろう?
ケイトの父親の暴力は、躾じゃない。
仕事でのイライラ、鬱憤、それらの気晴らしに子は親の所有物だからという理由で、殴る蹴る暴言を吐く等の暴虐を尽くした。
その最中に謝罪でも悲鳴でも僅かに上げれば、大義名分を得たとばかりに強める。取り付く島もない。助けもない」
ティオネ「小さいから抵抗できないのをいいことに!・・」イライラ
フィン「そんな環境で育っているのに、怒っている人相手に謝れるほどの精神的余裕があると思うかい?」
ティオナ「まず殴られると思って声も出なくなるよね。
あと、微動だに動いただけでも殴られてたし」