第48章 死
ティオネ「あんたね…」
フィン「…」すっ
団長が手で制し、頭を振った。
頭ごなしに言っても解決しないのは明白。
心の問題なのだから、本人が乗り越えなければいけない。
できることが少ない。寄り添うことしかできない。
ぱっぱと元気になれと叩くと、ケイトは静かに頷いた。涙を流しながら…
ケイト「人間以上に穢れた存在はいない…」
フィン「それでも…だからこそ、美しさはより映えるんだと思うよ…
君のような人間は、そうはいないだろうけれどね」
ケイト「私さ…精霊の森アルルェーチェが取り仕切る街ってことにしたい」
フィン「?」
アイズ「どういうこと?」
ケイト「精霊が、仕切る…そんな場所に、したい」
『!!?』
ケイト「精霊が集える…温かで、穢れていない存在…
穏やかで…時に激しく、自然の猛威が襲う。
その中でも、共に乗り越えて…一方だけじゃなくって…共に…発展して、ゆける…そんな場所に。
精霊なら、ちゃんと…その人となりも、本質も、言われずとも霊感みたいな感覚で、見抜けるから」
フィン「…理想郷だね」
ティオネ「できるの?」
ケイト「できないって…思ってたら、何でもできないよ。
出来ないまま、そんな場所があればという憧れだけなら…いっそ抱かない方がマシだ。
共に作り上げようとしなければ…いつまでも、絵空事のまま。
それよりは…精霊や、精霊達が…人と違うからって差別を受けない。
人権を持って、人達と共に暮らしたいと願う者達で…作り上げるその先が見たい。
誰かの意思が、心が、人格が…殺されて、その上で成り立っている。
誰かが泣き崩れ、殺され、無下にされる社会なんて…本当は、在ったら駄目なんだ。
憎まれっ子世に憚るじゃなくって逆になればいいのに。
でも理に働きかけるにしても、そうすれば皆の本来得られるはずだったものや試練まで崩れ兼ねないし…;
そっちの方が嫌だし…」ぐすんぐすん
フィン「…よしよし」なでなで
後日…
本当に精霊の森にいる精霊達が街を取り仕切ることになった。
その結果、他種族の差別も迫害もなく暮らせる
空中都市コクーンと同じく世界一安全で、安心に過ごせる土地と呼ばれることになった。