第48章 死
その懇願の際にも、謝罪と感謝の念を連ねた言葉をつらつらと言いながら何度も何度も頭を下げていた。
国王がそう簡単に頭を下げれば下に見られると言うのに…;
身分制度をコクーンでは撤廃されているとはいえ…
まあ…誠意を持って接したいというケイトらしい姿勢でもある。
ただ…あの街の連中は、何を言ってもやっても無駄で諦めてしまっていたし、父のそれでただでさえいっぱいいっぱいだったのだから仕方ないとも思う。
余計に話しかけれなくなるそれに、周囲が率先してさせているのだから。
挙げ句の果てに人のせいにするなと言い出す始末。
同じ環境に叩き込んで、それでも同じことを言えるかと問いただしたい気持ちで僕達は一杯なのだが…
無責任に口を開く、それでおろおろと振り回されるケイトを見て悦に入る、興に入る。
狂ったクズ共にしか僕の目には見えない。
得意不得意は誰しもある。
出来なくなるという障害を、産まれながら持っているアスペルガー症候群と共に、環境によって負った。
ごめんなさいと叫べば叫ぶほど、苛烈さは増していった。
黙って受け入れろと殴られ続け、蹴られ続け…
気付けば、怒っている相手には声が出なくなっていた。
今でこそ魔法で思念を飛ばせるようになったお陰で、僕達はわかっているものの…
あいつらとくれば、自分ができることは他人もできて当然とばかりにかかってくる。
出来ないことの障害も、それによる痛みも理解しようとすらせず押し付ける。
自分の不都合は理解されて当然、ケイトのそれは理解されなくて当然。
本人のペースに合わさなくて当然、自分達のペースに合わされて当然。
そんな状況下で…どうやって我というものを持てるのだろうか?
まともに持てる環境でさえもないのに、更に問い詰めて苦しませて興に入る…
そんな環境で、何故…どうやって…話し合いすらできるというのだろうか。
出来ないような状況に更に追い打ちをかけて追い込んでおいて、どの面下げてケイトが悪人だという先入観を必死こばら撒こうとし続けているのだろうか。
好きで、できないことを身に付けているとでも言う気なのだろうか?
産まれた環境は誰しも選べないというのに…
それから…ケイトは喉も通らない様子で、気が滅入っているようにも見えた。