第48章 死
三つ子の魂百までという言葉があるが…
それまで常に仕返しなど一切許されず、生みの父から虐げられ続けてきたからこそ起こり得たものだと僕は思う。
辛さ、恐怖、苦痛、哀しみ、負の感情しかない世界にいた。
生みの母が、生みの父がいない間向けてくれた愛情が癒しだった。
ヒステリックなそれも生みの父の気紛れに比べればマシだった。
姉は理解を示してくれ、自分と違い友達がいたそれに疎外感を感じつつも大切な存在だと想い慕った。
学校に通ってから始まった、毎日のいじめ。
反論など認めず、好き勝手に風評し当たり散らす道具とし
苦しむそれを見て笑い、より大勢で組み、多数で暴言を吐き掛け襲い続ける所業は正に悪魔。
苦痛以外何も感じない場所、牢獄としか捉えられないままイメージ改善も無く卒業。
その15歳の誕生日にされたのが、育ての家族皆殺し。
死んだように生きていればいいと同級生は嗤い、誹り、深い絶望の果てに再び感覚が麻痺し、心も精神も壊れてしまった。
だからこそ…周りへ一切期待しなくなった。
期待すればより痛く感じるだけ。無駄。
周囲が困っていれば助け、距離を取り、自ら決して関わらない。
それでもなお、周囲の傷付けてくる態度、姿勢は決して変わらない。
育ての家族と出会い、妹が産まれ、共に成長し…
生きようと一念発起したとしてもなお、周囲は自ら平気で傷付けてきた。
奪われ、蹂躙され、人への恐怖心を刻み込み、周囲の誰もが自らはそんなこともないとばかりに共に笑っていた。
心を閉ざし抱え込み、感情も心も不要なものとして自らを殺し続ける他なかった。
僕達と出会うまでは…
きっと彼女は、待っていたんだろう。
息を殺し、産声を上げるその時をただ耐え忍んで待っていた。
周りにとっての普通はケイトを皆で傷付けること。
そんな『非人道な行いをしても何も感じぬ者達』では決してなく…
人を、人の命を大切なものとして接してくる者達を……
そういう環境で、安心して産声を上げられるその日まで…
遠い年月、それも一日千秋という体感時間の中で声も上げず耐え忍んできた。
その結果が鑑定すると出る耐性の数値なのだと思う。
腕の中で気絶し、涙を流すケイトの頭を撫でながら…
僕は、「もう大丈夫だ」と唇を落とした。
「僕が、必ず守るから」と――