第48章 死
当時の強烈な思念の渦…それは留まる所を知らなかった。
生みの父、学校の同級生、毎日浴び続けた罵詈雑言。
謝らぬ存ぜぬで無視、笑って自らの方が辛いと誹られる。
周囲は素知らぬ振り、傷付くのを見ていて強者と共に笑う。
人に囲まれるだけ、接されるだけ、それだけで…
それら全ての、15年に渡ったそれらが同時に脳裏によぎる。
当時の恐怖心、不快感、その年月の間分のそれらが一気に押し寄せる。
恐怖の針が振り切ってもなお続くほど、それらはあまりに濃密で…
当時の幼く、非力で、されるがままに暴力や暴言を受け続けていたそれらまで蘇る。
ケイト「人、嫌。いやっ;;」がたがた
フィン「大丈夫だ!僕がいる」ぎゅうっ
ケイト「いやっ。ぅっ;」
次の瞬間、えずき出した。
必死に左手で僕の右肩を押して、距離を取ろうとしてくる。
もう数秒もしない内に吐き出すだろうケイトへ向けて、僕は背を撫でて抱き寄せながら言い放った。
フィン「苦しいんだろう?
ここでいい!吐いてくれ!」
ケイト「やっ;汚れr
フィン「吐け!」
ケイト「っ;;
ぅっ;ぅええええええええ;;」
吐いてすっきりした方がいい。
そう考えての判断だった。
しかし…おろろろと鼻と口から出続けるそれは
最早空気のみの空吐きになってもなお収まる所を知らず、本人も心底辛そうに涙していた。
アミッドが言うには、人に囲まれたことによるフラッシュバック、それに伴う心因性の嘔吐だった。
その内、次第に過呼吸まで出て、過度のストレスによって咳喘息まで併発し出し…
涙を流しながら力尽き…僕の腕へ身を預けて、そのまま失神…意識を手放し、気絶してしまった。