第48章 死
後ろ手に縛られた医師は必死に叫んでいた。
「後は呼び掛けるだけなんだ。
そうすれば帰ってくるんだ!戻ってくるんだ!!
何故邪魔をする!!!?」
リヴェリア「ふざけるな!」
「!!」
リヴェリア「死者をいたずらに増やしてどうする?
関係ない人間まで巻き込んで、どうなる?」
「黙れ!!!
お前達に私の苦しみがわかって堪るものか!!
家に帰ればいつでも家内が待っている!
それがどうだ!?強盗に奪われ!血肉を晒され財産全てを奪われたのが私だ!!
殺された子は僅か齢5つだ!!!
妻の腕の中で庇われながら息絶えていた!!
家に帰れば火がついていた!金目のものは全て奪われていた!!!
妻の死体で遊んだ跡まで残して!!!!
(ギリッ!!!)
私の気持ちが!!!!
お前らなどにわかって堪るものか!!!!!」
ケイト「ああ…わからないよ。
その痛みは…苦しみは、お前だけのものだ。
お前という歴史の中で得た、お前にしか理解できない痛みだ。
大切な人を失う痛みなら、誰もが知っている。
それでも…今、生きている。
生きているからには、今を生きないと」
「うるさい!!
掛け替えのない家族がいない世界など!!!
そんな世界でなど…生きていられるかっ!!!!」
ケイトへ肩を貸して支える中、なおも…ケイトは俯きながら男へ呟いた。
ケイト「…それだけで…どうにかできるほどの痛みじゃないことも、わかってる。
けれど、そうしていいことになったなら…今、生きている人達はどうなる?
私達は…どうなるんだよ」
かくっ←膝から力が抜け
ずるっ←崩れ落ち掛ける
フィン「ケイト!!」
ぐいっ!
「しっかりするんだ」と声を掛けた矢先、モンスターの目に光が宿った。
それに気付かないまま、ケイトへ目を向けていると…唸り声と子供の声が聞こえた。
子「父ちゃんを」ぐるるる
ティオナ「え?」
『!!』
子「いじめるなあああああああああああ!!!」
ぐおっ!!!
だぁんっ!!!
拳を揃って振り掛けられ、飛びずさった床が再び叩き割られた。
「ミツ!!」
その医師の叫びと共に…
モンスターへ、人間の子供のような姿が重なって見えた……
姿が変わったわけではない…
それでも…父である医師を守ろうとするかのように、僕達の前へ立ち塞がった。