第48章 死
現状できることは、通路をより早く移動すること。
人間ならば殺さないよう適確に倒すと共に気絶させ、人型モンスターならば壁に減り込ませ、壁が降ってくれば一丸となって壊し…
いずれにせよ先を急ぐこと。
それだけだった。
気が急く中、必死に駆けていった。
ワープで移動し続けるにしても、地の利を知らない現状では相手により有利を与えてしまう。
罠を仕掛けられていれば、それに何の抵抗もなくつかまってしまう。
いずれにせよ、逆に先回りしている相手に余裕を与えることになってしまう。
神の力を使ってケイトのもとへ瞬間移動することも考えられたが、相手が何もしていないとは考えにくい。
罠を仕掛けて待っている可能性が極めて高い。
逆にケイトが召喚陣の上にいた場合、それごと巻き込まれて助けることなどできない。
敵がそれを待って利用しようとしている可能性も否めないし、焦るのを見越した上で取っている可能性も高い。
そう考え続けさせることで、相手の行動の選択肢を狭めていく策なのかもしれない。
神の力を使ってケイトの様子を垣間見ようにも、障害物が多過ぎて先の見通しがし辛い。
通路もより複雑に入り組んでいて、道なりに進んでいくだけにしろ角に何が待っているかわからない。
神の力で圧倒させるか?駄目だ。
こんな洞窟の中では余波で崩れる可能性が否定できない。
神の力にとっては、如何なるものもどうにでもできてしまう。
繊細な扱い、殊更人への使用に慣れていない僕では…
そう思考を巡らせていく内、時間は瞬く間に過ぎていき…
気付いた時には数分後、目的地へ辿り着いていた。
しかし…そこにいたのはケイトではなく……
以前、空中都市を回っていた時に見かけた…
魔術式を手に取り、哂っていた男だった。←1681ページ参照