第47章 初めての
ケイト「フィン…私は、決めたよ。
ここは、皆の国だ。
皆が集まらなければ、これほど多様性に富まなかった。
だからこそ、皆にとって最上の場所としたい。
一個人が違うのはわかっている。
それでも…皆が折り合いの付く場所にしたい。困っていれば助けたい。
人としても、皆がまともに生きられる場所にしたい。
誰に何と言われようとも、この道を行く。
貫き続けて行くよ」
真剣な表情で、遠くを見据えて言った。
それは…昨日の晩、ヘレイオス街からの使者…ギルド経由の依頼が来る前の言葉。
それに僕は頷き
フィン「ああ。
僕も力添えするよ。些細なことしかできないけれどね」
ケイト「些細じゃないよ」
フィン「!」
ケイト「私にとっては…鬼に金棒。
それよりも…何よりも心強いよ^^//」
心底嬉しそうに微笑むケイトに、東屋の中で抱き締めた。
それから寝入り続けているアルとディを各々抱き抱え、家へと移動した。
敬虔たる人への態度、それの理由は…彼女の歩んできた歴史、生まれ持った性格によるものに他ならない。
それを僕は、改めて理解した。
何故あの時から…決して殺すまいとし続けていたのか、その理由をよく理解できた。←688ページ参照
ただ…あの想いを味あわせていい理由にはならない。
決して返ってこない。
奪われた怒りはあれど、この世では二度と時を共に過ごすことが出来ない。
それ故の哀しみ、激情、喉を震わせて耳朶を震わせるほどに咽び泣き、慟哭する。
どれほど泣いてもなお時は戻らず、過ぎたそれは帰らない。死したそれも蘇らない。
それほどの想いは、誰かが死しただけで起こるもの。
だからこそ、与えたくない。与えて笑うことなどできない。
仕返しをして笑う神経など持ち合わせていないし、理解できない。
人が痛がっているのに何で笑える?
苦しんでいるのにそれを見て何で笑える?
何で笑ってそんなことが出来る?
わからない。わかりたくない。
だからこそ…それを与えて平然としていられる人に等なって欲しくなかった。
ただ…同じ人になって欲しくはなかった。
愛しているからこそ、憎しみを抱かせるそれを与える人になって欲しくない。
それらのケイトの意図を…揺るぎない想いを、ようやく僕は理解できた。
来訪があったのは、そんな時だった。