第45章 魔術式
フィン「…自分という意思を殺し、感覚も殺し、相手の為すがままに振り回される。
これを奴隷と言わずに何という?人の意思など考えず好きに扱って笑う外道を何という?
だから…「君のその優しさに付け込む輩が、君というそれを狂わせた輩が、死んでも赦せない」と、そう思った」
ケイト「…何が言いたいの?」
フィン「…君は人の為に動けるが、周りの人間は決してそうではない。ということさ」睨視
ベッドの傍、窓際に備え付けられているソファーに腰掛けたまま
両手を組み、両肘を両膝の上に乗せたままケイトを睨視しながら呟いた。
ケイト「…」
フィン「挙句の果てに好き放題に振り回されたことを忘れたのかい?
振り回されなくとも、散々に本人達にとって都合のいい風評をばら撒かれていただろう?
君という本質を知っている人間はここにいる。
だが、そういう理解を得られて幸せになることを、気に入らないと思う人がいる。
だからそれに付け込んで苦しませ、苦しむ様を見て楽しみを感じる下賤な輩!
そいつらに君がいいようにされていること自体が僕等は許せないんだ!!」
だんっ!!←ソファーの肘掛けを叩く
フィン「自制心が欠片もない。ことケイトのみに対しては」
ケイト「そりゃ中傷被害には山ほどあったけど…自ら関わってきた奴等だけだし」そっぽ向き
フィン「君から許されることが、庇われることが!
奴隷から庇われて当然だと威張り散らす領主と同じだ!!
何故君は疑問に思わない?そのような扱いを受け続けることに!
何故相手は思わせないほどに追い込んで飄々としていられる?
何故彼等彼女等はそれほどまでに自分のことしか考えられない!?
君の感覚も心も殺させるだけでは飽き足らず!
価値観も何もかもを狂わせておいて、何故先生に促されるまました謝罪一つで許されると思い込める!!?」
ケイト「うーん…もういいよ。時間は返ってこないし」
フィン「何故被害を受け続けていた君が!加害者を庇い立てする!!?
一番納得がいかないのはそこだ!!!
はあっ…はあっ」睨視
疑問を吐き掛けた後、一気に息が荒れるほどに叫び
まくしたてながら立ち上がり、諦めたように遠くを見つめて呟くケイトへと迫った。
だが…どうにも、彼女のお人好しは変わらなさそうだ。
不思議と…そんな予感がした。親指の勘まで…