第45章 魔術式
フィン「ケイト…今一度、君は自分の欠点と向き合うべきだ」
ケイト「へ?」きょとん
フィン「…君は主張が弱い。
だが頑なに、人が目の前で傷付けられるのを嫌がる。争いごとへの発展を嫌う。
僕達が怒り狂う中もなお、その人達を傷付けさせまいと、殺させまいと必死に動いていた。
「痛いのは嫌でしょ?」と、される相手の気持ちに寄り添えるのは立派な長所だ。
だからこそ、それに付け込む連中が多い。多過ぎる。
代表例があの街の連中だ」
ケイト「えっと…;
何が言いたいの?;」
フィン「何をされても庇ってもらえる。赦される。
君は必要以上に人を責めたりもしないし、多人数で囲うなんて真似は死んでもできない。
そうすることを断固拒否といった姿勢を持ってしたがらない、顕著なこだわりがある。
それが育った環境、習慣によって成り立ったものだというのは知っている。
だが…だからこそ、相手は付け上がる」
ケイト「……」
フィン「どうやら思い当たる節はあるみたいだね」
ケイト「うー…ん;」頷
フィン「君は誰かを否定もしなければ拒絶もしない。
される側の痛みや苦しみを、痛いほどに味わい続けてきたから余計にだ。
殊更、暴力や暴言を関わる際に必ず生みの父から鬱憤晴らしの為にされてきたことで、感覚も麻痺しているだろう。
そうされることは当たり前のことなのだと…育ての家族と出会い、大切にされるまで気付くことさえなかったのがいい証拠だ」
ケイト「……でも…嫌じゃない?;」おず
フィン「だから付け込まれるんだ。
あいつは何をやっても仕返しをしない。大丈夫だ。好きにやろう。何やったって無害なんだから。
何を、どんな扱いを受けても、どんなことをしても、自分達は必ず安全だ。
そう思わせる要因になっている。
終いには、そうされて…何をやっても「赦されて当然だ」とせせら笑うまでにね。
だからこそ、君は感覚も麻痺する所かその扱いを受けないと精神が不安に陥るほどに壊され
常識という概念さえも歪められ、それを正されることさえも無く、周囲も気にすることなく…
君がそういう目に遭い続ける。そのことに「違う」と、一言言う人さえ、主張する人さえいなかった」
ケイト「………」俯
フィン「…違うかい?」
ケイト「…違わない」
未だベッドに腰掛けたまま拳を握り、ぽつりと呟いた。