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Unlimited【ダンまち】

第44章 出産後





胸の内に沸き上がる激情を止めることが出来ずにいた。


そのまま唇を重ね合わせていると、ケイトの想いが伝わってきた。

幼い頃の…切望が――



ケイト(誰か…助けて…)

誰一人としていなかった。

そのような存在が現れることを、心から焦がれた。


だが現われなかった――ただの一人さえも…



自ら関わる者は誰もが…自らを傷付ける者以外、居なかった。

普通に話しかけてくる人がいたとしても、比率的に見れば極々僅かでしかない。


経験上、回数上…どうあっても、父のそれの方が圧倒的に多い。

いつ来るかわからない、いつ殴られるかわからない、いつ蹴り付けられるかわからない。

父がいぬ間にようやく落ち着いて眠ろうにも…
帰ってきた父からの怒号に叩き起こされ、自らがしていないことへの怒りをぶつけられる。
今日会社であったことも伝えられないまま、その会社員がした行為への苛立ちをぶつけられる。

耳元で叫ばれ、つんざきながらもなお続く暴言、暴力…
それによってついた傷も、目に付かない場所へ巧妙にされる。

もしそれを見せて助けを求めようにも、家族以外と接する時だけ見せてるよう外面よく振る舞い
ぶつけたからだの、躾なのだと要領よく立ち回り、何もかも無かったことにされるだけでなく、帰宅後より激化したそれをぶつけられた。



怒気を纏った父に「私がしたことではない」と一言でも発すれば暴力と暴言は激化する。
呻き声をあげても激化する、悲鳴を上げても激化する、何をしても激化する。

何もせず、呻き声一つも上げず、悲鳴をあげないことを徹底しなければ痛い時間は続く。苦しい時間は続く。
次第に怒気を纏った相手には声も出ず、身動きもできなくなり、手も足も出ないまま嵐のように通り過ぎるのを待つしか出来ない。


母もいっぱいいっぱいだからかぶつけるようになっていき、気に入らないことがあれば抵抗できない自分に対して叩くこともあった。愚痴は毎日続く。
学校では自ら自身へ関わる者はいじめっ子や傷付ける者しかおらず、いい人からの干渉があったとしても頻度は半年に1回あるかないか。

次第に、「自ら自分へと関わる相手」と置き変わってゆき
同様に声が出なくなり、意見を発することも抵抗も何も人へ出来なくなり…

自らの死に対して、恋い焦がれるようになった。


テロップ『作者のリアル実話』


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