第44章 出産後
媚び諂っている、そう捉えている人もいる中…
ただ相手の幸せを願うが故の行為だということも理解されないことがまま多かった。
散々な目に遭ってきた結果、辛く当たる人もまたいるだろう。
しかし彼女の場合は真逆で、だからこそ理解を得られないこともある。
そう在ろうとする姿勢から、不幸のどん底、地獄を味わってきたそれに伴い…
その中でもなお、相手の幸せを心から願える姿勢は疑問視されることが多い。
その誠実さに好感を抱く人も多いが、嫌う人もまた多いだろう。
好き嫌いは人それぞれであり、自らがどういうものかを知るきっかけにもなる。
自らの抱く意見というものは早々変わり得ないものであり、変えるとしても非常に労力が必要となる行為である。
その日の内に、母と子は迷惑をかけた方々の家へ謝りに回っていき、壊したものは弁償していた。
母「あんたには…優しさを逆手に取られて利用されて、挙句の果てに損ばかりするなんて…
そんな道は、歩んで欲しくないのよ。
恩返ししようなんて高尚な人なんて、この世には滅多にいないの!
わかって?」涙目
子「……わかった…お母さんの、気持ちは。
でも…自分で考えて、正しいことが出来る人になりたい。
たとえそれで損することになっても!あの時ああしていればって後悔はしたくない。
利用とか、損とか…まだよくわかんないけど、されないようには気を付けるからさ!」
母「…わかったわ(嘆息)
…その時は、私に相談しなさい」
話が落ち着くまで、大変だったらしい。
早々うまい話なんてない。
絵空事とも言えるような、綺麗な方へ流れていくことなんてない。
利用する為、嵌める為にしている人なんて数え切れないほどに居る。
だからこその杞憂で…その為にかけた言葉だった。
だが…子が母のその言葉の本当の意味がわかるようになるのは……
人生という道を歩んでから、数十年が過ぎた頃だった。
人の穢れなど知らない子は、大人になっていく。
大人になった後、どう在るかは…やはり、人の抱く思想によって変わるのかもしれない。