第43章 出産
同郷の者達であってもなくても、人が自ら関わってこられること…
それそのものに恐怖に打ち震え、同郷の男性というだけであれほどにまで悲鳴を上げていた。←162~166ページ参照
何もしていないつもりでも、自ら関わらない者達が余計に傷を深くしていた。
家でも気が休まらず、かと言って学校でも気も休まらず、どこにも居場所が無く…帰る場所も無い。
追い出されていたのは母の機転とは言え、そう長くはなく…
母といる間は愚痴の捌け口にされ、自らの意見など求められず、もし言えば父と同様に暴力を振るわれていたのは同じ。
誰も自らの意見も意思も感情も求めてなどはいない。欲求など持てば邪魔者扱いされる。
精霊の森、精霊王の森以外どこにも行ける場所が無い。
温もりも動物以外からは与えられず、より一層孤独感を引き立てた。
挙句の果てに…
ああいう傷だけしか与えられなかった相手を、家族だと考えて走り出し護りに行くなど…
護りに行って――必死に怪物から護り抜いた相手から剣や石を投げ付けられて殺されかけるなど…
余計に、不信感を助長させて当然だ。
それでも…自らの意思を蔑ろにし、他にばかり合わせ…
誰も傷付けない人になろうとした。傷付けられる側の痛みがわかるからと。
しかし誰もが違って当たり前だというのに、話されなければわからないのに
わからない状態のまま、相手になど合わせられるはずもない。
合わされて当然だと、常識だと他に強要し…
他には他の常識及び環境があるという見解を無視し、話されずにわかって当然だと自らのそれだけを押し付け
ケイトのそれには一切耳を傾けず、何故そうしたのかについても疑問も持たずに決め付け、蔑ろにしている。
そんな相手など、護る価値などないだろうに。
見ただけで傷付けられるとすぐ繋げ、恐怖し、畏怖し、あれほど怯えるのも無理もないだろうに…
それがワザとだと、被害者ぶるなと余計に高圧的に叫んで脅し、父と同一視させ、怯える一方とさせる。
フィン「僕なら死ぬか。父母など置いて出ていたよ」ぼそ
『?』
ケイトの半生を振り返り、ポツリと一言零した。
しかし、本当に凄いのは…そんなことなどおくびも出さずに、他を気遣える姿勢なのだと、改めて僕は思った。
今度こそ、守り抜かなければ――と。