第43章 出産
リヴェリア『フィン』
フィン「?」
リヴェリア『出産中、いや、少なくとも7日は隣に居てやってくれ。
その間の仕事は私が変わろう』
フィン「!いいのかい?」
リヴェリア『ああ。私が、そうしたいんだ』
フィン「…済まない。
この恩は必ず返すよ」
リヴェリア『ああ、存分に返してくれ。
内容を指定してもいいか?』
フィン「?ああ、いいよ。何が望みだい?」微笑
リヴェリア『ケイトを…幸せにしてやってくれ。誰よりもだ』
フィン「!…それでいいのかい?」瞠目
リヴェリア『ああ。簡単なことではないはずだ。
あいつの人生は、人の手によって狂わされてきた。
誰にも救われず、諦め、狂い、自分を自らの命までをも軽視するようになった。
人に言われてもなお気付かないほど…
カルチャーショックのようにすぐには受け入れないほどに…
その心は疲弊し切り、感覚を麻痺させたまま……
私は…また、ケイトが苦しみ叫ぶ姿は…もう、見たくはないんだ。
だから、誰よりも幸せにしてくれ…
過去など、付属品に過ぎないと思えるほどに。
死にたい等、二度と思わせないぐらいに』
フィン「ああ…
でも弱ったな。これでは恩返しにはならない」苦笑
リヴェリア『いいや、私にとっては恩だ。
あの境遇では…自殺している方が自然だ。
時折見せるあの涙が、慟哭が…不憫でならない。
見ていて…痛くて、仕方なくなるんだ』
フィン「……それは…僕も同じ思いだよ」
リヴェリア『と言っても、自己満足に過ぎないのだろうがな(苦笑&溜息)
くれぐれも、からかって遊び続けないようにな?
あまり長引けば「私は遊び道具だ」などと言い兼ねない』
フィン「あはは、胆に銘じておくよ^^;」←渇いた笑いだ
精霊王の森の守り人。
それに選ばれた証として、出産の時に精霊王の骨でできた金の十字架が光輝くらしい。
だが、通常は霊感が強まることから妊娠中に気付くらしく…
実際の所、その感覚はなく…跡継ぎではないだろうと、少し沈んだ声でケイトが言っていた時のことが脳裏によぎる。