第43章 出産
絞り出すような震えた声で、涙ながらに縋るように尋ねた。
その声は…静かな待合室に響き、一人だけという状況も相まって……余計に、不安が煽られるばかりだった。
それに返ってきたのは…対照的な、快活な声だった。
ロキ『んなもん簡単や!
いつもやっとることやればええ!』
フィン「ぐすっ)?」
ロキ『ほら!いつもみたいにどっしり構えて!
「俺がいるから心配するな!不安になることなんて何もない!」ぐらい叫んだればええんや!
あとは…いつもみたいに余裕綽々に笑いかけて、手ぇ握ったり?』微笑
フィン「!!…」瞠目
ロキ『ケイト…言うとったやろ?独りやないって。
まだ失ってないのに、そないなこと言いなや』
フィン「……」俯
ロキ『…場所は迷宮!!』
フィン「ビクゥッ!!)!!
な、何を?;」
ロキ『その場にいる皆は愕然とした!
今までにない異常事態(イレギュラー)!
何も寄せ付けず、何もさせない圧倒的な力!!
それに誰もが絶望し…動かず…死の一文字がよぎる!!!
そんな中…皆を今まで引っ張ってったのは、どこのどいつや?』
フィン「瞠目)……
ふふっ(くす)
はははっ!^^」
ロキ『言うてみ?
お前の名は…?二つ名は何や?』
フィン「僕の名はフィン・グレイロア・ディムナ。
二つ名は…【勇者(ブレイバー)】だ!」真剣
ロキ『…お前は…どれほどの絶望を前にしてもここに来たんやろ?
ここまで、やってきたんやろ?』真剣
フィン「ああ…長かったよ」顔を上げる
怪物から庇われて両親を失い、一族の光(フィン)になることを志し、フィアナになろうとした。
なる為に修行僧のもとで修業し、旅に出て、ロキと出会い、恩恵を刻んでもらい、家族(ファミリア)となった。
失ってから32年もの時が流れて…ようやく、運命の相手と出会い、恋に落ちた。
そして…目まぐるしいほどの冒険の数々を経て…恩恵が神へと昇華された。
フィン「…随分とね」微笑
気付けば…体の震えも、涙も、止まっていた。
心にはもう恐れ等なく、やるべきことがはっきりと見えた。
ロキ『フィン…もう、わかるな?』
フィン「ああ!」頷&真剣
ロキ『頷)ん!
今までやってきたように、奮い起たせたり!
で、どうにもならん時…その力で助けたり?』
フィン「頷)…ありがとう、ロキ」微笑