第42章 伝説
ケイト「『辛かったね…苦しかったね…』
あの時…何がなのか、さっぱりわからなかった。
ヴェルフィンお父さんに受け入れられて連れ帰られた、あの時…
オリヴァお母さんに抱き締められ、頭を撫でられ背をさすられる中
「何を言っているんだろう?」という想い以外、何も湧かなかった。
『やりたいことは、何?』
そう尋ねられても、「死ぬこと」以外口をついて出てこなかった。
それからお父さんの鍛冶と、お母さんの家事の手伝いをするようになって…
程なくして、妹が産まれてくることを聞いた。
精をつけてもらいたくってヌシを倒しに行った。大変だったけどね…←476ページ参照
何度も死んで、殺されて…それでも、持って帰りたかった。
受け入れてくれた、初めての場所だったから…
血まみれで帰ってきた時、山ほど怒られたよ。精が付く以前の問題だって^^;
産まれてきた後を皮切りに…「死ぬこと以外を望まなくなった心」に、光が差した。
『ねっねー』
無邪気に笑みを浮かべて、手を伸ばしてオリヴァ母さんの腕の中から身を乗り出してきた。
ケイト『ありがとうっ』じわっ
促されるままに、オリヴァ母さんの腕から私の腕の中に移ってきたそれは…
とても無邪気で、暖かく…何とも言えない、愛おしさを感じた。
不思議と…涙が止まらなかった。
自分の妹だと、自ら言っているように感じて…
『ねんね、ねっね!^^♪』きゃっきゃっ
ぎゅっ
ケイト『ありがとおっ…』ぎゅっ
人差し指を自ら掴んで笑いかけるシルキーに…涙が、止まらなかった。
失いたくない…
初めて…初めて、ここに居てくれと…言われたように感じた。
産まれたばかりの妹を、シルキーを抱き締めながら、初めてこの世界で…産声を上げた気になるほどに。
だから必死で修業した。
護りたくって、愛したくって…頑張ろうってさ、何度でも…そう思えたんだ。←36ページ参照
ここを守る為に、産まれてきたんだってさ…
その日に、誓ったんだ…二度と、失わせないって;;;」ぼろぼろぼろ
滂沱とも言えるほどに、涙が止まらなかった。
どれほど服を濡らしてもなお、止まることを知らず…次々に溢れては零れ落ちていく。
その当時に流せなかった、出せなかった想いが溢れ出るばかりで、まるで堰が切れたかのように見えた。