第40章 果てのない悪意(闇)
ケイト「……でも…それは、十分戦ってきたって証だよね?
逃げじゃないように思えるし、そう見えるんだけど?」
その問いに、僕は黙ったまま首を横に振り、言葉を続けた。
フィン「首を横に振る)………
僕は…幸せを求めることから逃げた。
求めてはいけないし、求めてしまえばそれまでの全てが無駄になってしまう。
誰かと愛し合う未来など、人並みの幸せなど、関心を持ってはいけないと…
そう、思っていた…君に出会うまではね」くす←ケイトを見やり微笑みかける
ケイト「!//」ドキッ
フィン「……(微笑)
あんな何気ないやり取りが、幸せで堪らなくなることなど…一度として、無かったんだ――」←1047ページ参照
ケイト(そういう意味での逃げ、か…)ふむふむ←黙って頷く
フィン「だからかな…君が眩しくて仕方ない。
心からなろうとした英雄とも違い、心から相手のことを考えてのそれじゃない。
小人族の復興のことだけを考えての、清濁を併せて呑んでもなお貫かれる『打算』だ。甘い幻想では断じてない。
だが…君(ケイト)のそれは、英雄譚に必ずついて回る「偽善」ですらなく…
純粋に、相手の心を想っての「真心(本心)」だった。
だからこそ、天然の英雄よりも眩しく感じた。だから憧れた。惹き付けられた。
僕が君に惚れたのは…その真心あってのものだと、今になって強く想う。
時を経るほどに、強く感じている。
純粋過ぎる、真っ直ぐ過ぎる…そんな君が、好きで仕方ないのだと」←1230,1231ページ参照
ケイト「…でも…今後、同じように傷付く人を減らす為なら…
迷わず二度とできない体にしてしまうと思うよ?
何も握れなくしたり下半身不随にして歩けなくしたりとか」
フィン「だとしても、それは…今後増えるだろう犠牲者の気持ちを考えてのことだ。
どう在っても加害者が止めないとしないのなら、最善は君の言うやり方だろう。
非情に見えるだろうけれどね。
誰かの為に…殊更人のことを想って貫かれる非道は、外道ではない。
私利私欲の為に他を傷付け害し、何とも思わないもの。それこそが非道であり外道だ。
はっきり言って、傷を負うのが一人ならばそれだけの方がいい。多数が傷を負うよりは、余程」