第39章 闇を打ち払うもの
ロキ「じゃあ200年といったのは一体何や?」
精霊王「200年というそれは、精霊王の森でそのまま過ごした場合の話。
清らかな環境でなければ生きていけん。それを無理に俗世に来ている。
魚で言い表わせば、海水魚を淡水で無理に生かそうとするようなもの。普通ならばすぐ死ぬ。
強いて言えばケイトは欲がない。
醜い欲に振り回され、自らの思い通りにならなければ喚く。当たる。暴力を振るう。
そのような下賤な行動など取らん。心が清い者でなければ、あのような力は発現せん。
そして…女は世継ぎを出産すれば、男であれば妊娠させれば…」
フィン「……どうなるんだい?」
精霊王「…このまま俗世に居座り続ければ…急速に衰え、死に至る。
それを防ぐ為、『精霊王の森の守り人』という役割がある。そして首飾りのもととなるわしの骨を与えた」
『!!』
精霊王「強いて言えば、これ以上生かす為の建前よ。
あの結界も浄化という特性を持つ物質…元来の目的は護ることに非ず、延命でしかない。
十字架に選ばれし者は、元々生まれつき『浄化』という性質を抱いておる者と相場が決まっておるからな」←1038ページ参照
フィン「そうでなければ選ばれないということか」
ガレス「だからこそ不浄に当たる闇、ひいては邪念が理解できんのか」
リヴェリア「涙を流してまで向き合おうとしていたのは、闇の力の暴走を予め妨げる為だというのにな…」
ロキ「……で…うちらにケイトを説得せい言うんか?」
精霊王「…」
ロキ「絶対納得せんで?
今でこそ、ようやく自分の胸の内を少しずつやけど吐き出せるようになってきた。
ようやっと…ここまで辿り着いたんや。
お前…そこでケイトの意思を反故にする気やったら、許さんで」ギロ
両目を見開きドスの利いた声と共に睨み据えるロキに…我々は何も言えず、無言の肯定を示しながら見守った。
そしてロキは付け加えた、「たとえ死んでもや」と…
真剣な表情で、眼差しで…真っ直ぐ精霊王を見つめながら言い放った。
それに精霊王は静かに頷いた。
精霊王「わしも同じ気持ちじゃ。
できることなら、ここに居たいというあやつの意思を尊重したい。
が…無理なんじゃ……」俯く
重い表情で力無く項垂れる精霊王に、私達は揃って眉を顰めた。
その理由を知ったのは、次の言葉が放たれた時。