第39章 闇を打ち払うもの
精霊王「ケイトは元々、わしらと同じく自然に由来する。
動物に近く、全部顔に出る。
怒れば怒り、泣きたければ泣き、楽しい時や嬉しい時は心底快活に笑う。
周りを在りのままに受け入れようとする彼女の姿勢は、自然そのものを害さぬまま共に生きる仙人のようですらある。
元々…相容れないものじゃ。この現世(うつしよ)とはのお。
精霊王の血をより濃く受け継ぎ、なおかつ神の因子まで持ち、龍神の娘であることから魂の力まで引き出せる。
純粋過ぎるが故に、鋭敏に闇を…負の念を感じ取ってしまう。邪念とやらをだ。
だからこそ…この俗世の闇に弱い。
それと同時に、彼女にとって染まるということは死ぬということに等しい。
もっと言えば、闇というものに蝕まれる度に短命へと傾く。ストレスやらに晒されてな。
わしらの世界である争いはここまでが自分のテリトリーだという縄張り争いだけ。他で同種を害することはない。
そもそも同胞を殺そうとまではせん。人間とは違っての。それも私利私欲で殺されるなど堪ったもんではない。
だから…返して欲しいと思うとる。まだケイトがケイトで居られる内に…
妊婦であること自体、耐えれておらんかった。←1193ページ参照
精霊王の森でなければ回復せなんだのは…現世そのものが邪心、もとい負の念が蔓延る地であるからに他ならん。
体が無意識の内に拒絶し、闇に染まることを由としておらんからこそ起こり得たこととも言える。
このままでは…取り返しのつかんことになり兼ねん。
あやつは絶滅危惧種のようなものじゃ。もし死ねば…血統は絶える」
フィン「返せ…物扱いか?」睨視
精霊王「…本人が嫌がるなら無理強いはせん…
だが、わしの血縁の者じゃ。それも最後の…唯一のな。
ケイトが自然起因の力を自然と息をするように使えるのもまた、それに由来しておる。
あいつは本来、人という俗世とは関わりなど持ってはならん。
しかしじゃ、それでは人としては成長できん。あの荒波の中でもなお貫ける心、それを持った者にこそ強大な力は相応しい。
その代わり…力が強大であればあるほど、短命であることには違いはない。
体にかかる負荷は大きくなり、それと同時に寿命もまた削れていく。
ストレスというそれに加え邪念に蝕まれ、見る見る内に削れていった結果…短命に陥るということ、伝えたいのはそれじゃ」