第39章 闇を打ち払うもの
朝に帰った所、人生初めての完全敗北を期した6月1日(冒険者69日目)から…1日が経った朝。
昨日、打ち明けれてすっきりしたんだけれど…
やっぱり、まだ…全然…ちっとも…勝つ見込みが一切としてない。
リヴェリア「どうした?」
ケイト「………」
リヴェリア「悩み事か?」
ケイト「…うん」頷
リヴェリア「何に悩んでいる?」
ケイト「明日…遠征でしょ?」
リヴェリア「ああ」俯
ケイト「馬車で安静にしてなきゃいけないのはわかる。
でも、それまでにどうやって……闇に打ち勝つかが、さっぱりわからないんだ。
私はさ…あの時、すっごく気分がよかった」
リヴェリア「?あの時?」
ケイト「処刑を知った時さ。
あいつらは…ずっと、口々に言ってきてたんだ。
「死ね」「消えろ」「来たら殺すぞ」「人のせいにしてんじゃねえよ」「きもい」「きしょい」「嘘だろ」って軽くさ…
どれもこれも、一字一句今もされてるように浮かんでくる。
と同時に…される経験がないからやれるんだって思った。
ああいう経験の上にさらにされればどう感じるか…考えたらわかるだろうに……
でもあいつらは頑なにやめなかった。
物心つく前からの父親のそれで言い返せない、抵抗できない…
少しでも反応すれば、嫌がれば、もっと強く暴力をされたから余計……
そんな私に対して、笑いながらさ。
そんな言い返されない状況に胡坐かいて、高笑いして、群れて、囲って、笑って…
そうするのがさも当然のようにずっとずっと、何年も続けてきたよなあ。
それが処刑を受けたって聞いて、理不尽を与えたことに怒った。
あんなクズと同じになんてなって欲しくなかったから…」
リヴェリア「!…(クズ?
ケイトの口から、そんな言い方は初めて聞いたな」
瞠目するリヴェリアに対して話す中、その部屋に近付く二つの気配を感じながらも…
私の口は、止まらなかった。
誰の中にでも、『闇』はある。
それをひどく痛感させられるほどに、心に潜む闇は深く、重く…
何年にも渡って深く傷付けられながらも深く深く根付いたそれは今もなお心の奥底から猛り狂い、叫び声を上げ続けていた。