第37章 アイズの気持ち
フィン「ちょっと待ってくれ。一体いつ、ケイトに打ち明けたんだい?」
アイズ「えっと…ラキアの戦いの前日」
フィン「5月14日(冒険者51日目)…あの晩の時か」
アイズ「うん…打ち明けていて、買い物に出るのを遅くさせちゃって……」
フィン「なるほどね。
遅くになってから買い物へ行ったのはそういうことか。
そもそも…21時に外出なんて、普段のケイトならまず絶対にしない行為だ」←1170ページ参照
その時…僕は何故アイズがケイトと結婚したいと言い出したか、わかった気がした。
『誰か…助けて』
そうアイズが心から望んだ時、悲願も叶ったことでもう何をすればいいのかわからなくなった時、ケイトは隣に居て抱き締めてくれたという。
その件については、報告もあったので知っていた。
早い話が…アイズにとってはケイトこそが、初めて助けようとしてくれた『英雄』なんだ。
助けを求める為に声を出さずとも、霊感が故に泣き震える声が聞こえて察し、駆け寄って抱き締めた。
それに礼を言うも、ただやりたくなっただけだとケイトは満面の笑みを浮かべながら笑って流していた。
気負わないように…楽しい時間を過ごせるよう、細心の注意を払い続けていた。
その優しさは、まだそれほど知らぬ相手に対してさえにも振る舞われる…
だからこそ、惚れたんだろう…
ただ…彼女のそれは、環境が大きく起因している。
誰も助けてくれなかった。護ってくれなかった。
周囲は誰もが自分の幸せを最優先し、自分の『助けて』という叫びも何もかもを無視して笑い、嘘つきやほら吹きなどと言い、心無い言葉ばかり吐き掛けては傷付け続けていた。
無抵抗なのをいいことに…
心を殺せ、無いものとしろ、でなければよりひどい目に遭う、殺せ、いなくなれ、死んでしまえ。
そう自分に言い聞かせていたのだと…その詳細を知ったのは、新婚旅行の時のことだ。
生みの父親から殺されかけた際の生々しい悪夢によって苦しんで、それを信じて打ち明けてくれた。
話すだけでも辛かっただろうに…
そう言ってケイトの頭を優しく撫でると、彼女はありがとうと感謝を返した。
そう言ってくれる人が…ずっと欲しかったのだと満面の笑みを浮かべ、頬を赤く染めながら……