第36章 *帰還まで
きっと彼女は知っている。
始祖神の記憶を持っている、力を持っている。
ならば…言い出さない理由は、切り出さない理由は何か?
話した所でどうにかなるような次元の話じゃないからだろう。
それだけじゃない…
きっと…僕達へ無理を掛けまいとしている。負担を与えまいとしている。
それだけは…ちゃんと僕達は解っていた。わかっていたからこそ…深く聞こうとすることさえできない。
ロキ「そうか…勝手に無茶して、抱え込むんやないで?」ぽんっ
ケイト「ん…わかってるよ。
向かう時には、ちゃんと皆にも伝える。
心配してくれて、ありがとう」微笑
『……………………………』
ケイト「え?;何?その顔?;」
その言葉の後、全員が固まっていた。
てっきり誰にも伝えず、自分一人で解決しようとするかと思ったからだ。
ブランシェの時のように…浄化の力を持たない僕達では、まともに相手にさえならない。足手纏いでしかない。一瞬で思うが儘に屠られる。
黙ったまま向かったのもまた、僕達の負担を考えてのそれもあるが…親友だからこそ、そのけじめを付ける為というのもあるはずだ。
今回のことは…始祖神が自分で残した後始末をするというものに他ならない。
だからこそ、伝える必要もない。自分一人で向かって勝ちさえすれば何も言うことはない。
必ず帰ると…帰ってこれさえすれば、それでいいと……ブランシェの時のように……
僕達は、そう思っていた。思い込んでいた。
今回もまた、絶大過ぎる巨大な敵に対しての戦いにおいては『力になれない』とわかっていたからという想いから…
彼女が明言したそれは、きちんとその時は伝えるということで…
ついてきたいのならばついてきて構わない、というのと同意義だ。
あのぶつかり合い(1091~1094ページ参照)もあったからこそかもしれない。
ただ…彼女からの信頼の証のようにも感じて、それが堪らなく…嬉しさを掻き立てた。
『しゃあっ!!!!』
ケイト「?え?」
ロキ「おおおおおおお!!!!!」
ケイト「何?;」
ロキ「進歩しとる!!滅茶苦茶進歩しとる!」
ケイト「だから一体何!?;」
その後…嬉しくて仕方ないということを伝えた。
そしてついて行くメンバーもまた予め既に決まっており、自然と主力メンバーが揃って挙手していた。