第36章 *帰還まで
ポーションを飲ませれば治るだろうか?
そう考えた僕は少しずつ飲ませようとしたが咳き込み、吐き出してしまった。
それを見た僕は、あの時のように口移しをした。
よくよく見ると、瞑っている左目から涙が零れ落ちていた。
嬉しさからか、喜びか情けさからか…よくはわからない。
その普段では見ない様子に、精霊王に診てもらうことにした。
精霊王「生まれ落ちてからストレス塗れだったからの。
咳喘息になっておった。
それが要因で、今でも喉は弱い。
精霊寵愛の効果も胎児に吸い取られて弱まっていたことも相まって、こうしてぶり返したのじゃろう」
フィン「!…
それでか。弱ったあの日から、晩にいつも寝苦しそうにしていたのは」
精霊王「咳をこらえてのことじゃろうて。
薬を作っておったのはわしじゃったし、70束ほど必要になるわけだが」
フィン「僕が取りに行く」
ケイト「嫌だ…行かないで…行っちゃ…やだ」ぜえっぜえっ
フィン「安心してくれ。必ず帰ってくる。
君は僕の妻だ。そんな君を置いて死んだりはしない。
『未亡人にさせないでくれ』と返してくれただろう?
約束する。絶対に死なない。待っていてくれるね?」ぎゅっ←左手の甲を包み込むように右掌で握り締める
ケイト「…うん」
フィン「お守りに上着をかけて置いていくよ。そうでもしないと心細いだろう?」
ケイト「うん…ありがとう」
テロップ『まるで今生の別れのようだ!』
精霊王「……取りに行ってもらう所は全く危険のない場所なんじゃが;」
テロップ『雰囲気がぶち壊しである』
結構険しい場所ばかりにあった材料を35種類を2束ずつ、70束ほど集めた後に精霊王へ届け、咳喘息の症状が出始めてから数時間後に薬は完成した。
届けてから完成するまでの間はずっと、僕はケイトに寄り添い背を撫で続けていた。
再び口移しで飲ませた所、ようやく咳はすぐにではないが徐々に鳴りを潜めていった。
次の日の朝には完全に全快しており、予定通り朝の内にラキアへ魔導列車の視察も兼ね、それで魔法大国アルテナにまで行けた。
念の為に精霊王の森で1日ゆっくりする予定を元から組んでいてよかったと、心底思うばかりだった。